テレビで橋下氏が都構想なるものを語っていたが、正直に言って話術が巧みで「なるほど、そうかも知れん」と思わせるものだった。
しかし孔子先生はおっしゃっている。巧言令色鮮し仁(口のうまい者には気をつけろ)と。
橋下氏曰く「このままでは大阪は衰退する」「その原因は行政の司令塔がないからだ」と。
これは、解りやすそうだが雑な理屈である。国全体の政治・経済の分析なしで理屈にもなっていない。自分達が知事も市長も7年間もやってきて何という言い草。今までの大阪府に出来なかった(と橋下氏はいう)大阪府が大阪市解体後の大阪府(都ではない)になったら司令塔になるという支離滅裂。
「大阪市が特別区に解体されてもサービスは低下しない」「そう書いてある協定書を総務大臣が認めているから間違いない」とも言う。
ここにはごまかしがある。総務(省)大臣は協定書が要件を満たしていると審査するだけで、それ以上のことを総務省(国)が関与することはないし出来ない。一般庶民が国の行政システムを知らないことをいいことに、まるで法律で内容が裏打ちされているような印象操作だ。
重ねて言うが「総務大臣が内容を了としている」かの物言いは詭弁である。
この種の手法(話術)は詐欺師の常套手段である。
その上に「サービスが低下しない」確約はない。仮に「低下しないようにする」と注釈的に書かれたとしても、それは今後は知事と府議会が決めることである。私が知事なら、旧大阪市よりも行政水準の低い府下の自治体が多数あるのに旧市内だけ手厚い水準を維持するのは「ちょっと待って」と言いたくなるだろう。誰が考えても解る常識だ。
思い起こすと、こんな政治の話は何回も経験してきたことだ。国鉄民営化のときも、郵政民営化のときも、「サービスは低下させない」「今より格段に良くなる」とバラ色の確約が国会で発言された。しかし、儲からない地方はバッサリと斬り捨てられたではないか。これが地方消滅のひとつの要因でもある。
政治の言葉で「低下させない」という言葉は修飾語のひとつでしかない。
おまけを言えば、職員思想調査をはじめ、橋下市長が訴えられた訴訟は彼の連戦連敗である。
それでも、ある種彼の歯切れのいい物言いを信じるのは、霊感商法、オレオレ詐欺を信じることと変わらない。
重ねて言おう、師曰く巧言令色鮮し仁と。
橋下氏は、当初は一番のキャッチコピーであった「どこが二重行政であるか」ということについてはもう説明できなくなっている。
府立大学と市立大学があってなぜいけないのか、府立体育館と市立体育館があってなぜいけないのか、もう何も言えなくなっているが、だから論点をずらして「このままでは駄目だというのは知事と市長をやってきた僕が一番知っている」という言い方だ。
確かに大阪府・市政は、同和行政の歪みや不動産屋まがいの開発優先策等の失敗をしてきたが、これは政策の話である。それとは別に「もうだめだ」というのは橋下氏と維新の7年間の無能ぶりを自白したものではないか。
官民を問わず、7年間も知事や市長のような席にいて、「僕の責任ではない。組織が悪い」と言うのような無責任なリーダーはあり得ない。
「目玉売ってこい」「腎臓売ってこい」の商工ローンの顧問弁護士や最後の色街・飛田新地の料飲組合の顧問弁護士をしていただけのことがある。
ああ言えばこう言う、こう言えば徹、とでも言おうか。
彼の言葉は耳で聞くと説得力があるように聞こえるが、文字に起こすと根拠のない断定、論理のすり替えでしかない。
それは詐欺事件、催眠商法そっくりだと私は思う。
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