2015年5月21日木曜日

下品を称賛する土壌

 自分のことは棚に上げて住民投票後に思った上記タイトルのことを書く。
 読売テレビで辛坊治郎キャスターが、「生活保護の受給者や目先のサービスの切り下げに反対した高齢者が反対した結果だ」という主旨の発言を、結構下品な言葉づかいで発言し、幾つかのマスコミが「シルバーデモクラシーの弊害」と銘打ってそれを拡幅している。
 先に事実をあげておくと、70歳以上が反対多数でそれ以外の年代は全て賛成多数という「当日の出口調査の統計」なるものを今回の投票傾向とするのは誤っており、人口構成等からしても統計的に矛盾がある。
 全体の4分の1を占める期日前投票ではその他の若い層でも反対票が相当に上っていたと考えなければツジツマが合わない。
 だから、そもそも事実に基づかない分析であるし、それを根拠に「既得権に執着したエゴイスティックな高齢者の我儘」と描き出したものである。
 読売グループの(株)讀宣が大阪府市大都市局の随意契約で118,848,600円受注していることも特筆しておこう。
 一般に、子育て中の女性を除く若い層よりも高齢者の方が住民サービスに敏感であることはあるだろうが、それは全く悪いことではない。
 それに、子や孫の将来を案じて考え抜いた高齢者を「我儘なエゴイスト」と断定するのも悪意だろう。
 さて、橋下氏の「叩き潰してやる」的な発言もそうだし、そういう発言が49%強の賛成票を生んだし、そして否決後もこのような悪質なデマに近い中傷がテレビから発せられている。(投票結果がさかさまであったならどんな酷いパッシングが行われていたかと想像すると背筋が寒くなる)
 いつから、こんな下品な発言が称賛されるようになったのだろうか。
 私は二つの源流があるように思う。
 一つは、大阪でかつて無視しえないほど問題の大きかった「解放教育」ではないかと思う。
 下品で暴力的な発言を「権威に対する批判」というように事実上称賛した「解放教育」は、この地の精神的土壌にマイナスの影響を与えたし、当時の暴力的「糾弾闘争」をマスコミが肯定した歴史的事実も、今次「都構想」のマスコミの偏向ぶりと相似している。
 当時、解放同盟大阪府連の「行動隊長」であった谷畑隆氏は社会党から国会議員に出て、その後自民党に移り、今は維新の党の副代表という事実は象徴的で皮肉である。
 もう一つは、視聴率に迎合するマスコミの「露悪趣味」というか、「俗悪で猥雑で下卑た大阪人」的なワンフレーズの繰り返しと、バーナム効果(例:A型の人はこうだと言われるとA型の人は自分はこういう性格だと思うということ)がある。
 「下品」にプラスして「アンチ東京」と「反権威」「本音」「庶民的」などの言葉を味付けすれば、このバーナム効果は否定し難い。
 「大阪学」的な書籍の多くもそれを後押ししている。
 だから私は自分のことは棚に上げておいて思うのである。この「俗悪な大阪人」的なワンパターンの決めつけについて、「そうではない」との意思表示を大きな声で繰り返さなければならないと。

 よかったら、このタイトルと噛み合っているわけではないが、次の想田和弘氏の指摘もご一読あれ。
 http://www.magazine9.jp/article/soda/19229/

2 件のコメント:

  1.  長谷やん、記事中の辛坊治朗キャスターの暴言は私も見ました。
     橋下市長との親密ぶりは、以前から知られていた辛坊氏の事ですから、悔しさのあまり、この暴言をつい吐いてしまったのでしょうが。それにしてもこの発言は二重にも、三重にも問題があります。
     まず表現的にも選挙結果に対するコメントという域を出た悪罵とでもいうべき恥知らずなもので、公共の電波に乗せるのもはばかられるものだと感じました。この点ではプロ中のプロである辛坊氏の品性を疑いました。
     次に内容ですが、出口調査の当否は置くとしても、橋下派が敗れたのは、生活保護受給者と目先のサービスの低下に反対した高齢者のせいだ、と一方的に決めつけるのには唖然としました。さすがに番組ではこの後に、「多分これで視聴者からの抗議が集中するでしょうが」と冗談交じりに断っていましたが、この内容については二つ問題があると思います。ひとつは生活保護受給者と高齢者の見識や判断力を見下し差別していることです。二つ目は、投票結果をそういう軽いものとして評価をすることで、軽視し、貶める役割をはたそうとしていることです。どこまで有権者を馬鹿にすれば気が済むのでしょうか。
     日頃から橋下氏べったりの報道姿勢でひんしゅくを買っている読売テレビのことですから、こんな節操のないキャスターがいても不思議はないのでしょうが、それにしてもひどすぎます。
     ここまで一線を越えた発言をするのでは、長谷やんも指摘するように、後継市長に打って出る可能性も考えられますね。
     最後にこんな不公正な内容を臆面もなく発言したのが、コメンテーターではなく、番組の公平中立さに責任を持つキャスターであったことは極めて重大だと思います。





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  2.  和道さんのコメント、非常に参考になります。 
     中立というのは、橋下氏の虚偽の主張とそれを批判する主張があるときに、半分だけ虚偽の論調を貼ることではないはずです。
     そういう意味では、読売テレビ以外の在阪テレビ各局の姿勢にも首をかしげるものも少なくありません。
     私はこのごろ、1970年代の八鹿高校事件などのことを思い出します。マスコミがこぞってペンを折ったことです。
     マスコミの報道姿勢を批判することは重要でしょう。

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