2019年4月8日月曜日

忖度したと? この正直者めが

塚田一郎国土交通副大臣(自民党参院議員)は5日、副大臣を辞任したが、議員は辞職していない。
安倍首相も、彼の派閥の領袖である麻生氏も表向きは「辞める必要はない」としていたが、各種選挙を前にしてトカゲの尻尾は切り落とされたようだ。
西日本新聞によると、問題になった1日夜の北九州市での演説の内容は次のようなものだった。テレビ報道よりも生々しい。

 ◆ 麻生太郎衆院議員にお仕えして、はや20年近く。最初の総裁選は大変でした。その時代から、麻生太郎命、一筋でやってきた。筋金入りの麻生派です。
 実は公務で(福岡県に)来ました。福岡空港の民営化の開設式です。私は新潟の自民県連会長もやっているので、50人の同士の応援要請があったが、かわいい弟分の大家敏志参院議員(麻生派)の要請があり、おやじ(麻生氏)の顔が浮かんで足を運びました。麻生派は渡世の義理だけで動いている。ほとんどやせ我慢の団体です。私は夏に参院選があるが、自分の票を削って北九州に参りました。

 国交副大臣なのでちょっとだけ仕事の話を。大家さんが私が逆らえない吉田博美・自民参院幹事長と一緒に「地元の要望がある」と副大臣室に来た。下関北九州道路(の要請)です。これにはいきさつがありまして、11年前に凍結されています。何でか分かります? 「コンクリートから人へ」の流れで、とんでもない内閣があったでしょ(※事実上凍結した2008年当時は自公政権)。総理は悪夢のようだと言ったがその通りです。

 何とかしないといけないと。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか? 安倍晋三総理です。麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっている。吉田先生が私の顔をみて、「塚田、分かっているな」と。「これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。「俺が何で来たか分かるか」と。私は物わかりがいい。すぐ忖度(そんたく)します。「分かりました」と。

 そりゃ総理とか副総理はそんなこと言えません。私は忖度しました。この事業を再スタートするには、いったん国で調査を引き取らせてもらいます、と。今回の新年度の予算で国直轄の調査計画に引き上げました。
 別に知事に頼まれたからではありません。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度したということですので。
 いろいろ計画があります。トンネルが良いという人がいるが、橋がいいのではないかということで、おそらく橋を架ける形で調査を進めて、できるだけ早く、みなさまのもとに橋が通っていけるように頑張りたい。◆

   当人は「事実と違うことを言ったので撤回する」と言ったが、事実を正直に話してしまったので辞任するのだろう。
 
 さて、4日の国会で共産党の仁比聡平議員が明らかにした本件要望書にはさらに腰を抜かさんばかりに驚いた。
 平成28331日付け石井国交大臣あてのその要望書に安倍晋三の名前があったのだ。
 法律に手取り足取り書かれていなくても、総理大臣である者が国交大臣あて要望書に名前を出すのは常識外れの振舞いだろう。
 問われるべきは安倍首相である。やっていいことと悪いことがある。
 首相の中国嫌いは、なるほど、漢籍には「李下に冠を正さず」というような常識の教えが少なくないからだろうか。

 忖度の名の下にこういう横車(政治の私物化)が堂々と通ってしまうと多くの国民は政治や選挙に無力感を感じてニヒルになる。そういう倦怠感がこういう政治をさらに助長する。
 卵が先か鶏が先か。今日は統一地方選挙の話題で消し飛んでしまいそうだが忘れてはならないだろう。

 ところで、在阪テレビ局のコメンテーターには吉本の芸人が多数起用されている。
 芸人だからダメだとは言わないが、「これは張り切り過ぎて口が滑ったのやろう」「私らも受けた時には調子に乗って口が滑るときがある」のコメントはないだろう。
 政治に対する冷笑主義(シニシズム)はニヒリズムを助長し社会を腐らせる。

 報道の自由度ランキングで日本はG7で最下位、世界72位、ということは途上国の独裁国家並みかそれ以下だと国際機関は述べている。
 茹で蛙は茹でられている事実を知らない。

 注【正直者めが】上方落語:禁酒関所、江戸落語:禁酒番屋

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