2021年12月23日木曜日

住吉踊り 4

   12月13日のブログのコメントでスノウさんから、生田花朝女の大和絵の画賛が、能・謡曲の高砂に出てくる有名な歌『われ見ても久しくなりぬ住吉の岸の姫松幾世経ぬらん』であることを教えてもらった。
 その歌はさらに元をたどると平安初期の『伊勢物語』にあることはそれ以前に書いた。

 さて伊勢物語というと、主人公「昔男」は在原業平と言われており、薬子(くすこ)の変によって嵯峨天皇に敗れた平城(へいぜい)上皇の孫で六歌仙の一人でもある。
 平安京から旧都平城京(へいじょうきょう)への遷都を試みた平城上皇は平城京の東北に住いし「萱の御所」と呼ばれたが、孫の業平はそこを不退転法輪寺と号したお寺にした。略して不退寺で俗に業平寺という。

 業平と伊勢物語については、平群の十三峠に関わって以前にこのブログで「井筒」に触れたことがあったが、このブログで再会するとは思っていなかった。そもそも「業平寺」はわが家からそんなに遠くない。何度かは参拝したこともある。

 そんなもので、「何かの縁」というほど大袈裟なものではないが、今般車を走らせた。
 「業平寺(不退寺)」は以前に比べて寂れた感じがした。
 受付からの連絡を受けて老僧が本堂を開けてくれた。
 こんな冬にお参りに来る人は私以外見当たらなかった。
 名だたるプレイボーイのお寺というよりも、老僧がただ仏をお守りしている静かな古刹であった。老僧は別に解説するわけでもなく、穏やかな時間をいただいた。

 元に戻って、住吉の松は高砂の松とペアの、相生の松、夫婦(めおと)松である。そして能、謡曲「高砂」の大主題はこの「松」である。林望氏は「本曲には私どもの「民族の記憶」が豊かに息づいていて、それがこの曲を、能を代表する祝言曲たらしめている」とのべ、「松は、すなわち神の憑代(よりしろ)にほかならないのである」と指摘している。異議はない。
 まもなくお正月だが、わが家では玄関に夫婦松を並べるのが決まりとなっている。クリスマスが済めばお正月の準備をする。

0 件のコメント:

コメントを投稿