2018年12月29日土曜日

勇魚(いさな)を食べながら考えた

ナガスクジラの美味しそうなお刺身があったので買ってきた。
筋もなくほんとうに美味しかった。

さて日本国憲法前文第3段は次のとおり謳っている。「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」と、・・これは国際協調主義の原則といわれている。

他国のことながらトランプの政策・主張はこれと真っ向から対立している。
ならば、日本国首相がどう立居振舞うべきかは言うまでもない。
しかし乍らご推察どおり、トランプの「熱心な臣下」(ニューヨークタイムス)である安倍首相は、例によって「解釈改憲」を重ね、ついにはトランプに倣って国際協調主義の原則まで踏みにじるに至った。
つまり安倍政権は1226日、国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を決めた。

 私は捕鯨も鯨食も文化だと思っている。秩序ある捕鯨は認められるべきだと思っている。
 非科学的な論理でそれに対抗する人々とは徹底的に論戦すべきだと思っている。
 それが現代人の理性であり外交の神髄だと思っている。
 つまりIWCの多数意見は不当である。さはさりながら、子どもの喧嘩のように脱退するのは多数意見の不当さに何十倍も輪をかけて最低である。

 はて、安倍政権は沿岸の漁業者のために脱退を決断したのだろうか。
 今でも沿岸でのツチクジラ漁などはIWCの管轄外であるから、ただただ首相の選挙地盤の下関の沖合漁対策ではないのか。
 
 先の国会では、安倍政権はほとんど審議をせずに漁業法改正案を強行採決した。
 そも漁業法は、不在地主ならぬ羽織漁師の前近代性改革のためにつくられていたものだが、改悪案では、漁業者を「主体とする」ことも「民主化」も削除した。
漁業権の漁協への優先順位も廃止。
漁業調整委員の公選制も廃止。
大型船のトン数規制も撤廃・・・というものだ。
一言でいって漁業を大企業に売り渡すものである。
以上のどこに漁民への支援があるというのだ。

 重ねて言うが、IWC脱退は憲法理念に反する大愚策である。

   勇魚という名に及びもせぬ愚策かな   

3 件のコメント:

  1.  堺の湊・出島には鯨山車を引く祭りがありました。というように、捕鯨には文化の側面がありますが、これらは沿岸捕鯨です。反対に安倍政権がごり押ししたいのは遠洋捕鯨ですが、これは戦後の食糧難の時代にあった一時的なものです。
     遠洋捕鯨には文化といえるほどのことはありませんし、再開しても費用に対して需要がなく赤字になるだけです。
     安倍政権はトランプに倣ってマスコミを焚きつけて強者を演じたいだけでしょう。

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  2.  子どもの頃、映画館で本編上映の前にニュース映像が上映され、南氷洋で捕鯨オリンピックとか云って今年も日本が第1位なんて万歳する姿が映し出されていました。子ども心にワクワクしたものですが乱獲の奔りだったんだと思います。
     大阪の鯨料理の老舗「徳家」のおかみさんがIWCからの脱退で喜んでいるかと思ったら「心配です、単に鯨の問題ではなく日本の漁業全体に悪い影響を及ぼすことがないだろうか?」と。商業捕鯨を喜んでいる二階幹事長に聞かせてやりたい見識だと思いました。

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  3.  「よその国の食文化にケチをつけるな」と二階氏は言うが、その言葉はそのまま「よその国の文化も理解に努めよ」というように跳ね返ると思います。
     南氷洋の鯨は個体識別されたうえで日本におけるパンダのように名前が付けられてホエールウォッチングされています。例えば愛子さまというように。
     そこへ日本の船団がやって来て、「ああ、今日は愛子さまが殺された」という状況といいますから、彼らの主張にも一理あります。だからこそ脱退ではなく対話しかないのだと考えます。
     世界中に「日本は三流国」だと宣言したようなものです。こんな決定を国会審議することもなく行政府が勝手に行ってよいものでしょうか。

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