2016年7月23日土曜日

アイム ジャパニーズ

 「アイム ジャパニーズ ドント ショット(私は日本人だ 撃たないで)」と、ダッカの犠牲者は言ったと現地の生存者は述べていた。
 犠牲者はJICAの関係者で、バングラデシュの復興のために熱心に貢献していた人々だった。日本国内では特にそう強調されている。
 そうであるなら、この現れた結果との落差は何だろう。
 大前提として、いかなるテロもクーデターも容認できない、断固として抗議する立場で、なおかつ冷静に考えてみたい。

 バングラデシュは世界の縫製工場と呼ばれている。
 世界的に有名な日本企業も多く進出している。
 賃金水準は中国の3分の1以下らしい。月収20ドルというレポートもある。底抜けの「労働法」で女子労働者がトイレも我慢して長時間労働に「拘束」されている。
 それでも、もしかしたら平均的なバングラデシュの庶民からしたら「マシ」なのかもしれない。

   そういう庶民の暮らしがある下で、事件のあった場所は「裕福な地区」と報じられている。
 日本料理店も経営するオーナーの高級レストランである。
 ラマダン中の金曜日だった。
 で私は遠い日を思い出した。

 私は、小さい頃堺市に住んでいた。
 当時の夏のレジャーの中心は海水浴だった。
 堺には浜寺公園という白砂青松の海水浴場があった。
 しかし私が小さい頃は広い公園は進駐軍のキャンプに接収されていて、この海岸と公園はジャパニーズ オフリミットと表示されていた。
 その後、海岸での海水浴は日本人にも開放されはしたが、駅から浜辺までは金網に挟まれた狭い通路を「通してもらって」海に行かせてもらっていたのだった。
 ダッカのレストランを見て、そんな記憶がよみがえってきた。
 あのレストランは小さな私が見ていた金網の向こうの世界ではなかったか。

 その後の報道を見ていても、「危険な箇所には近寄らないでおこう」的な解説が続いているが、世界中の危険な箇所を知ること以上に、世界中の庶民の暮らしとニッポン株式会社のありようを知ることが大事ではないだろうか。
 重ねて一切のテロを擁護しないことを確認しつつ、犯人たちが「ムスリムとジャパニーズは外に出ろ」というぐらいの状況を私は夢みる。
 ただ政府広報の問題ではなく、ニッポン株式会社のありようを考える。
 168年も前にマルクスとエンゲルスはこう言った。万国の労働者団結せよ!。
 日本の労働運動ももう一度原点を振り返える必要がないだろうか。
 その方向にこそ再発防止の道があるように思う。

7 件のコメント:

  1. 日本の労働組合の組織率が2割を切っているという状況について連合も全労連も打つ手なし、と拱手傍観しているように思えてならない。事は重大である!どんなに民主的な国家だって労働組合なしに労働者の生活が安定するわけはなく、ましてや、今の日本の安倍独裁政治の中で2割弱の労働組合でどうして労働者の生活を守れるというのか?根本的な問題であろう。

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  2.  ひげ親父さんのコメントが提起している課題はあまりに大きなものです。
     正直に言って正解は見えていませんが、こういう議論をしあうことも無駄ではないように考えます。

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  3. 社保庁やJALの不当解雇で、ああいうことが起きるのなら次は自分たちに来るから助け合おうというのが弱い立場同士の連帯だと思いますが、当事者がまず頑張れ、とか今までいい目をみてたから当然でしょとか、そこまでではないにしても、個別の事情があるんだから一方に肩入れできないという態度とか、助け合いのスイッチが入らない理由がいっぱいあるんだと思います。今までも同じようなことがたくさんあったはずなんですけど、労働運動ってどういうわけか経験が蓄積されていかないですね。そのわりには、役員には古いことがいろいろ背負いこまされていて若い人が自由に動けないところがあるように感じています。

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  4.  mykazekさん、貴重な意見をありがとうございます。その時代その時代の困難は形が違っても重いものがありますね。それに、そのときそのときの自分の年齢も微妙に関わっているように思います。「若い人が自由に動けないところ」って興味があります。またの機会に教えてください。

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  5.  安定した雇用と人間らしく扱われる労働基準こそがテロを根絶する。
     庶民も、なかんずく労働運動も、そう声をあげるべきでないか。
     政権は一切そうは言わないが、早期に気付かなければ、早晩大きな後悔をする。

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  6. 小さい規模でも人が定期的に集まるおもしろい場を作るというのができてないと感じます。学習会とか原水禁大会みたいにあまり自主性のない形から入ってしまうか、さもなくば1回限りの飲み会とか大がかりなイベント開催のように継続性のないものになって消耗するかのどちらかで、楽しさが続いていくのがないんですよね。しかも、これはいいと思うような例えばほかの単組の若い役員の方々は、いろいろ兼任していてものすごく忙しいのです。

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  7.  mykazekさんのコメントは胸を打ちます。だが私には適切なコメント返しができません。そういうときは三人寄れば文殊の知恵ですね。

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