2014年2月26日水曜日

小さい小さいお家

  映画「小さなお家」は、「山田監督が、忍び寄る戦争の影を見事に描いた。」という評があるが、私の感想はそうではなく、「人々は忍び寄る悲劇を想像しないまま、あるいはその不安にあえて目をつぶってあの時代を生きていた。」という事実を見せてくれたところに意味があるように思う。
 その時代の気分を、3.11の後、更なる悲劇につき進まないよう、あの白々しい政府発表でさえ、「嘘かも知れないが信じたい。」「信じたい。」と『思いたい』と思う自分がいたことと重ね合わせると、「不安をあえて封印した時代」というものが非常によく理解できる。

 今、義母が外泊で我が家にいるが、どうしても夜になると掴みどころのない不安感やうつの気分に襲われるらしい。
 その対症療法ではないが、毎日新聞社刊『1億人の昭和史』を引っ張り出して見てもらった。
 すると、嘘のようにしっかりした目になって、自分の意思でページをめくり始めた。意外であった。
 といって、過去の記憶が湧き上がりそれを語るわけでもないが・・・・、
  兄は兵隊に行きました。
  もう死んだと思っていたらひょっこり帰ってきた。
  夫(つまり義父)は結婚して3か月もしないうちに召集され、
  内地に居たので助かりました。
  国防婦人会ではバケツで消火の訓練をした。
  近所の防空壕に入れてもらった。・・・・というような事をポツリポツリと、そして同じことを何回も何回も私に話した。
 私は、小さな小さなお家の映画の我が家版を観ている気になった。

  そして、『1億人の昭和史』をめくりながら、F先輩と語ったことなどを思い出しながら『現代若者事情』を考えた。
 その問題意識は「田母神氏の得票に見る若者の右傾化」だが・・・。
 よく考えると、25歳~30歳の人たちの親は50歳~60歳代だろう。
 つまり、彼ら彼女らにとって太平洋戦争は祖父たちの話で(場合によっては曾祖父)、はるか昔の話である。その感覚がよいか悪いかは別にして・・・、
 という人々にとって、今さら従軍慰安婦の責任、A級戦犯の責任といわれても・・・という感覚ではないだろうか。
 よほど破れかぶれでないかぎり、「戦争をしてはいけない。」とは彼ら彼女らは思っている。
 また、戦後何十年も日本は戦争をしてきていないし、戦争の賠償も済んでいると考えている。
 だから、中国や韓国はいつまでも祖父たちの時代の責任を「言いがかり」にして日本の領土にちょっかいを出しているのではないかと不愉快に思い、
 それは、これまでの政治家が弱腰すぎたからで、安倍首相がはっきりものを言っているのはだからいいことだ。
 現代の礎になった先人の慰霊に靖国に行くことも含めて・・・・・、
 ・・・・・・といったところではないだろうか。
 私が言いたいことは、論理的に国家主義や全体主義というものが広がっているというよりも、いわゆるリベラルといわれる人々が、この感覚にフィットしたものの言い方ができていないというか下手なのではないだろうかという思いだ。
 「では、おまえはどう上手く語れるのだ。」といわれると辛いが、出発点はリアルに現状を見ることだと思う。
 ご批判、ご異論を乞う。

5 件のコメント:

  1. ここ数年本屋に入るのが不愉快になり出るときは腹立たしくなっている自分に気が付きました。一番目立つ入口に積まれているのは、原発容認のエネルギー関連、中国、韓国、北朝鮮への罵詈雑言、アベノミクス賞賛、「靖国」の大見出しの雑誌、単行本。中に入れば同じような売上人気ベストセラーの掲示。チラチラ見ながら通り過ぎるだけですが意図的な仕掛けを感じています。一般人を装った右翼や出版会社や流通業者からの「指導」があるのではと思っています。本屋に入る人達は学生さんや真面目な人が多いと思います。買う、買わないの問題でなく心理的な宣伝物とすれば結構な効果がありそうです。何気なく見てしまうというのは怖い事です。TVはその冴えたるものですから安倍がNHKを私物化しようとしているのでしょう。

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  2.  スノウさん、今日私はジュンク堂で楽しい本を見つけました。
     ちくま文庫の『神国日本のトンデモ決戦生活』です。第1章は『神々しき靖国の社』から始まります。
     多くの皆さん方に推奨いたします。
     まだ数ページ読み始めたばかりですが、面白そうです。
     さて、安倍氏の「戦後レジュームの脱却」ですが、ほんとうは国民世論が止めなければならないのですが、まずはアメリカが「ええ加減にしろ」という時が来ると思います。その時に、メディアや出版関連業界は、何もしていなかったように変身すると思います。実に情けないことですが、その時にまた論じましょう。

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  3. 本当に情けないですね。いろんな意味で論じられていますが日本は島国で、他民族からの支配、略奪等を遺伝子に持っていなから自省出来ないのでしょうか。

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  4. 昨日、高齢者の集まりで、NHKの受信料不払いを、という話が出て、「そうや、そうや、やらなあかん」という事で盛り上がりましたが、会長やら、経営委員の首を切ったら終わり、ではいかんのんと違う、根元は安倍やで!という結論に。言論、教育統制を本格的にやっている安倍首相を包囲する国民的な運動が必要だと思います。NHKの中にも組合はあるし良心的なディレクターもいますから。

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  5.  先日、テレビ大阪の「たかじんのNOマネー」という番組に共産党の小池副委員長が出ていました。
     その後、フェースブックに「あんな下らん番組に出るならもっと困っている労働者のところに行く方がよい」というようなコメントがありました。
     私は「ホームだけでなくアウェーで頑張るのが素晴らしい」と入れました。
     なぜなら、「大企業は内部留保を労働者や下請けに回すべし」という議論のくだりで、「そしたら海外に出ていく」というツッコミに小池氏は何と答えたと思います。「大企業には愛国心がないのですか」です。私はテレビの此方で大笑いをしました。
     あんなTPOに応じた発信を多くのリベラル派の人々ができればいいですね。

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