2017年12月13日水曜日

介護の話

 本をいっぱい読んで解ったような気になってはならない。
 「事実は小説よりも奇なり」というのは的を射ている。
 もうすぐ老人ホームのお餅つきだが、素人は「そんな危ないもの(お餅)を食べさせて大丈夫?」と心配するが、スタッフに言わせると「今の高齢者はお餅を食べた記憶が深く蓄積されているからお餅の食べ方が上手だ」「だから滅多に詰まらせることが無い」という。
 お餅を食べるときの口に動かし方がスムースなのだと。
 すき焼きも同様らしい。
 反対に、意外に喉を詰まらせるのが海老らしい。
 こういう話は本を読んでも出てこない。

 それでも嚥下が不得手な方は喉を詰まらせることがある。
 善哉の中のお餅のときもたまにはそういう方がおられる。
 私などはその同じ場所で気が付かないのだが、スタッフの方々は離れた場所の入所者に、「あっ!〇〇さんが詰まらせた」と一瞬にキャッチして、素早く背中をトントンして対処される。
 唸られたわけでもないのに、わずかな呼吸や態度の変化で対処される。
 そんなとき、やっぱり介護は畢竟「人だ」と私は感心する。

 「介護職員が不足するから外国人労働者」という政治家がいるが、介護職員の待遇を改善すれば解決することである。
 介護の対象は抽象的な老人一般ではなく一人一人の人間だ。
 以前関西以遠から来られていたスタッフが、最初入所者が「御不浄に連れて行って」と言われたのに「御不浄」というのが何なのか分からずに困ったことがあったと言われたことがあるが、こういうことは決して「些細な事」ではないと思う。
 外国人労働者を差別的に排除する気はないが、こういう機微が通じるだろうかと私は心配する。
 
 先日から老人ホームの餅つき大会の準備をしながらそんなことをいろいろ考えている。
 スタッフの方から『お孫さんが「祖母はお餅を丸めるのがとても上手い」と言っておられたよ』と聞いた。
 確かに、義母は我々よりも格段に上手にお餅を丸める。その表面には皺がない。

 そういうノウハウを引き継ぎもしなかった世代が、「お餅つきで食中毒が起こったら大変だ」などといってお餅つき中止を口にしている。
 以前にも言ったことだが、お餅つきは常識と気配りで安全に行うことができる。
 それを信用できないのは、無知か、学ぶ気がないか、気配りする努力を逃避しているかだと私は思う。

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