どんな学問でも同じだと思うが、先行した学説を最新の発見で検証して、納得しがたい部分について事実に即して新説を考えるところに意味がある。読者から言えばそこが一番楽しい。
そういう場面は第一章から登場し、次のような記述に出くわした。
■ 八幡塚古墳の調査から約50年後、「埴輪芸能論」という論文が発表された(1971年)。書いたのは水野正好という当時新進の研究者であった。・・水野37歳のときの論文である。■
多くの批判的見解を持ちながらも、縦横無尽に古代を語る故水野正好の話は面白かった。奈良や大阪でどこかの講座が受講生を集めようと思えば、水野正好を講師にすれば常に満員であったように思う。かく言う私もそういうファンの一人だった。
今城塚古墳発掘の責任者でもあった水野正好は、■ 人物埴輪群像の意味を「葬られた死せる族長の霊を、新たな族長が墳墓の地で引き継ぐ祭式が埴輪祭式である」■(首長権継承儀礼説)と述べ、その頃は、葬列説(後藤守一ほか)、殯説(和歌森太郎ほか)、顕彰説(大場磐雄ほか)などが提唱されていた。
で、著者若狭徹は何と考えたか。それは読んでのお楽しみ。非常に内容豊かで納得できる説である。ひとことヒントを言えば、形象埴輪の意味も時代と共に変化したというのは非常に大切な指摘である。
今城塚古墳で学んだ皆さんには是非とも一読をお勧めします。古墳時代も奥が深い。
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