ところが最初の方はやはり演劇論のような文章が多く結構読むのに苦労した。
表紙に「生きることは演じること」とのサブタイトルがあるが、私たちの人生は演劇そのものでないかという指摘は否定のしようがない。
演劇とは「他人になる」ことだから、演劇を深めると、「シンパシー」他人に同情する気持ち、「エンパシー」他人の気持ちを想像できる能力が高まる。そしてそれこそが現代日本人に欠けていることではないかと私は読んだ。
ほんとうの意味で「日本人はコミュニケーション能力」が劣っているという文脈で著者は、「それは、人に迷惑をかけるなという呪い」だと指摘しているところも面白い。そこではこういう言い方もしている。「誰が正しくて誰が間違っている、ということではありません」「何が迷惑になるかは曖昧で人によって違い、話してみないと分からない」「それだけのことなのです」。
そういう話しがあちこちにあり、社会の歪みや現代人の生き方にも関係しているところが頭書の書評の疑問への回答だったかも。
芸能は「あなたの人生はそれでいいのですよ」と肯定するものであるが、優れた芸術にはその要素を含みながらも「あなたの人生はそれでいいのか?」と挑発するものだという見解も刺激的だ。
「どうしたら演技が上達しますか?」とよく聞かれます。僕は「場数(ばかず)です」と答えます。・・というのも納得だ。「演技」のところを何かに入れ替えても真理に違いない。
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