万葉学者上野誠先生の授業に出席した。
タイトルは『万葉びとの「よばひ」』で、万葉集巻の一の一番歌≪籠(こ)もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち・・・・≫を注釈しながら古代の婚姻の▼名告り▼よばひ▼結婚の話に進んだ。
なんとなれば、古典文学の理解の基礎に生活の理解が不可欠とすれば、その研究は生活文化の研究と一体のものである。よばひの研究抜きに婚姻や恋愛の文学が解ることなどあり得ないというためである。
そして、▼名告り・・では、女性が名前を告げることは婚姻を承諾したことを表した。「母が呼ぶ名」は公にしない。
▼よばひ・・では、互いの名を呼び合う動詞「よばふ」の連用名詞形。男が女の家に訪ねてゆく権利が保証される。ただし、女性は複数の男性にこの権利を与えることができる。クーリング・オフ期間。
▼結婚・・では、二人の結婚が社会に対して公にされる。女性の家の一角に妻屋(つまや)が建てられ、新婚生活がはじまる。夫は妻のもとに通うことになる。妻訪ひ婚の形態。・・・と解説され、万葉集の中のいろいろな詞を上げて当時の状況と心境を復元されていった。
これらの話は考古学や古代史の話ではなく古典文学の話である。
考古学的実証が好きな私だが、これはこれで新鮮で楽しかった。
そして文学的ミーハー?で、持参した著書にサインをいただいた。
サインには万葉集の発句が添えられていた。
ほととぎす通低音に万葉歌
妻屋(ツマヤ)の話では、主たる建物がオモヤで従たる建物がツマヤ。ツマヤは基本的にオモヤの北に建てられた。故に「北の方」さらには「北政所」という言葉が生まれたと…。
返信削除新鮮な話が少なくなかった。