2017年7月16日日曜日

日本ファーストの危険性

   昨日の記事で私は19世紀ヨーロッパの宗教事情をマルクスは批判したと書いたが、同じ文脈で21世紀のポピュリズムを少しだけ考えてみたい。ポピュリズム、それは鎮痛剤で済むのだろうか。

 周知のとおり、先の都議会議員選挙では、政策提起がほとんどなかった地域政党「都民ファースト」が圧勝した。
 古い感性の自民党にうんざりしていた都民の「なんとかしてほしい」「何かが変わるかもしれない」という「現実の不幸に対する抗議」であり「ため息」だった(昨日の記事参照)と私は思う。
 だがそれは19世紀の教会でなく21世紀の政党であるだけに、その一瞬の鎮痛効果はほどなく麻薬に転じるだろうと私は心配している。

 目ざとい右翼が「日本第一党」を名乗り「ジャパンファースト」を唱えているのは、都ファの行く末と全く無関係とは思われない。
 新自由主義から蹴りだされた非正規雇用の若者や、TPPなどで自民党政治から捨て去られた農村の人々が、そのキャッチコピーに酔いたい気分も判らないではないが、最終的にそれらの人々は「ジャパン」の構成員には認められず、それどころか場合によっては「既得権益者」として足蹴にされるだろう。

 現代のポピュリズムは「既成政党をぶっ壊す」「市役所をぶっ壊す」「福祉への甘えを許さない」的な言葉を羅列して不満をたきつけ、支離滅裂であろうがなかろうが、嘘であろうがなかろうが関係なしにメディアを駆使して自らを改革者だという幻想を振りまく。

 中でもマスコミ受けする課題は不寛容なクレーマー的事件である。
 そういう中「俺はこんなに苦労しているのに報われていない」感情が外に向くと、目は自ずと福祉に向いて弱者に向かう。私にはそれが怖い。
 「金のない透析患者は死ね」といった長谷川豊や、麻生太郎、曽野綾子の自己責任論が今後のポピュリズムの太い主張になっていくだろう。悲しいけれどこの推測は当たるだろう。

 だから、10数時間の手術を受けた孫の将来を考えると、マジョリティー?ファーストの未来は怖ろしい。
 事実ナチスは障害者の写真を使って「国家財政の無駄を省く」と大キャンペーンを行った。
 ポピュリストには、この世は『既に障害を負った人々と今後障害を負うであろう人々で成っている』のが解らない。
 そうしてメディアは、芸能人の不倫問題と同じ土俵で、社会に生じる矛盾をほじくっては不寛容な発言を正義面して繰り返す。一寸待ってほしいと願わずにはいられない。
 重ねていうが、現代のポピュリズムは19世紀ヨーロッパの教会になる可能性を指摘しておきたい。

 憲法第25条 1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 憲法改悪は言語道断である。
 社会保障は人権の問題である。
 どうか障害のある子を無駄などと言わないでほしい。
 心から願っている。

    甚平着てアラーム音のICU

4 件のコメント:

  1. 奈良東大寺は華厳経の教えを勉強するお寺で。華厳経の思想に「一即多、多即一」と言う言葉があり物質を構成する微塵の原子の中にも無限の宇宙が含まれており無限の宇宙も微塵の原子と同等であるという考えで、地球の全てのものはかけがえのない存在で、一人の人間は全宇宙、全地球を代表し全てパーフェクトだと教えています。物事を相対的にとらえず、比較、差別化せず、優劣を評価せず、全てがそのままで素晴らしいものだという教え。金持ちは良くて貧乏人はダメ、秀才は良くて劣等生はダメではなくそれぞれがそれぞれの力で仏の世界を作っている。そうとらることが華厳経の思想で、私もそう考えたいと思っています。

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  2.  長谷やんの気持ち「甚平着てアラーム音のICU 」痛いほど分かります。自分やったらどれ程おたおたしているか分かりません。凛君が元気で活躍している姿を祈っています。

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  3.  スノウさん、華厳経の神髄をお教えいただきありがとうございます。私はというと、経典等の勉強は全くせず、お坊さんの説法の片言隻句を自分の都合の良いように解釈して納得している横着者です。勉強になりました。

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  4.  バラやん、コメント感謝、感謝。ICUではひっきりなしにアラーム音が聞こえます。家に居て遠くから救急車のサイレンが聞こえるとICUが連想されて困ります。ほんとうにありがとう。

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