2017年6月18日日曜日

文化審議会の人事に介入

 奈良の歴史・文化や考古学に興味のある私としては見過ごすことのできないニュースである。

 「週刊朝日」623日号によると、『明治日本の産業革命遺産』でも首相補佐官による文科省の文化審議会へのゴリ押しの“人事介入”があった。
 異変があったのは昨春で、文化庁が用意した委員リストに和泉洋人首相補佐官が注文をつけたのだ。
 和泉首相補佐官は菅義偉官房長官の“分身”とも言われる官邸のキーマンで、加計問題で前川氏を「総理が言えないから代わりに私が言う」と恫喝したとされる人物だ。

 「和泉氏は文化庁の幹部に対し、文化審議会の委員から日本イコモス委員長(西村幸夫氏)を外せ、と言ってきて、結局、西村氏は委員から外れた」と前川氏は語った。 
 外された西村氏は世界遺産を認定するユネスコの諮問機関・イコモスの国内組織の委員長で、文化審議会の世界文化遺産・無形文化遺産部会の部会長も務めていた大物だ。

 「産業遺産の旗振り役は、加藤六月元農水相の長女で安倍首相と親しいと言われる加藤康子(こうこ)さんで、和泉氏もかなり早い時期から一緒に取り組んでいた。加計学園の理事でもある木曽功氏は、ユネスコ大使の経験を生かして産業遺産を世界遺産に登録するために内閣官房参与になった。木曽氏と和泉氏はこの件をきっかけに緊密な関係になっていた」(前川氏)

 ちなみに加藤康子氏の妹婿は安倍首相に抜擢された加藤勝信・1億総活躍担当相だ。 
 康子氏は安倍首相とは<幼馴染み>と「週刊新潮」(15521日号)のインタビューで語り、康子氏は157月、内閣官房参与に就任している。 
 また、康子氏が専務理事となって世界遺産登録のため立ち上げた「一般財団法人産業遺産国民会議」の名誉会長には、安倍首相と近い今井敬経団連名誉会長が就任。今井氏は産業遺産の一つに選ばれた八幡製鉄所を運営する新日鉄住金名誉会長でもある。

 しかし、康子氏が推す産業遺産の世界遺産推薦に難色を示し、「待った」をかけたのが文化庁の文化審議会だった。
 「本来、世界遺産は全体が一つのコンセプトでまとまったものである必要があるのですが、『明治日本の産業革命遺産』は構成資産が広範囲にわたる上にコンセプトもバラバラで、一つのストーリーになっていない。産業革命遺産なのになぜか松下村塾から始まっていますからね」(前川氏)

 元文科官僚の寺脇研氏がこう解説する。 
 「産業遺産の中には民間企業で稼働中のものや保存状態に問題があるものもあり、保存について検証する役割の日本イコモスも懸念していたと聞いている。産業遺産には戦時中の徴用工の歴史もあり、国際的に見ても中国や韓国から反発を受けるのは最初からわかっていた」

 こうした経緯から138月、文化審議会は産業遺産ではなく、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を世界遺産の推薦候補に決定。一方、康子氏や和泉首相補佐官率いるチームは、内閣官房に別に有識者会議を設け、産業遺産を推薦候補とし、両者は真っ向から対立した。 
 同年9月、菅官房長官の裁定で産業遺産が政府推薦候補に選ばれ、157月には世界遺産登録。康子氏、和泉首相補佐官らの大勝利となった。 
 なので、昨春の和泉首相補佐官による「西村氏外し」は、かつて文化審議会が盾ついたことに対する、“報復人事”ともみえると「週刊朝日」は書いている。

 さすが『内心を処罰する共謀罪』を強行した安倍政権である。「文化も歴史も政権に歯向かうものは許さない」だ。
 良識ある文化を大事にしたいと願われている”保守”の皆さんも、「おかしいことはおかしい」と声をあげてほしい。

    五月闇国道をゆく迷い犬

0 件のコメント:

コメントを投稿