2017年3月23日木曜日

朝日新聞の矜持

   国境なき記者団が発表した2016年報道の自由度ランキングで日本が全180か国中72位であることには納得する。
 主要メディア幹部が国会の山場で首相と度々会食する事実と、そのお追従に似た報道内容は比例している。

 しかし、その中には真にジャーナリストでありたいと考える人々がいて、微妙なせめぎあいの中で今日の状況のあることを冷静に見る必要もある。
 だから、批判は批判として、頑張ったペンの力には正しい称賛が必要だともいわれている。
 そこで私は、閣議決定後の「組織的犯罪処罰法改正案」などという誇大広告に従わず、一貫して「共謀罪」という言葉で見出しを作っている朝日新聞にエールを送りたい。

 まず、22日朝刊の「天声人語」を転記したい。
 やさしい「父(とう)べえ」は大学を出たドイツ文学者。戦時体制下で治安維持法に背く「思想犯」として逮捕され、長く拘留される。家族との連絡は検閲された手紙だけ。妻子は困窮する。2008年の映画「母(かあ)べえ」である▼治安維持法は1925(大正14)年4月にできた。当初は共産主義を抑え込むための法律だったが、取り締まりの対象は言論人や芸術運動にまで広がった▼法律制定にあたり、ときの内相若槻礼次郎は「抽象的文字を使わず具体の文字を用い、決してあいまいな解釈を許さぬ」と答弁した。司法相の小川平吉は「無辜(むこ)の民にまで及ぼすというごときことのないように十分研究考慮を致しました」と説明した▼90年以上たったいま、国会で似た答弁をしきりに聞く。犯罪を計画段階で罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ法改正案に対する安倍晋三首相の説明だ。「解釈を恣意(しい)的にするより、しっかり明文的に法制度を確立する」「一般の方々がその対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討している」。その法案がきのう閣議決定された▼3度も廃案となった法案である。時代や状況は違っても、政府とは何かと人々を見張る装置を増やそうとするものなのか。政治権力の本能を見た思いがする▼「母べえ」が描くのは、捜査機関の横暴だけではない。法と権力を恐れ、ふつうの人たちが監視する側に回る。秩序や安全を守るという政府の声が高らかに響き、社会はじわじわと息苦しさを増していく。

 そして22日夕刊の「素粒子」である。
 テロ対策の金看板を掲げた共謀罪。羊頭狗肉(ようとうくにく)の見本のような。しかも、はやりの一匹狼(おおかみ)テロリストには効果なし。
 ☆ 競馬法も職業安定法も商標法もテロ対策か。テロ集団がノミ行為をしたり、仕事を紹介したり、偽物を作ったり?
 ☆ 私は「一般人」か。国会前デモにいたら。その団体はいつ「一変」するか。常時監視のオーウェル的社会の到来。

 共謀罪は内心を処罰する治安維持法だ。
 朝日新聞もこう言っているぞと話を広げたいものだ。

   防相は人を殺して死ねよとか (川柳)

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