2017年3月4日土曜日

お水取り

   「水とりや籠りの僧の沓の音」という芭蕉の句が東大寺二月堂下の句碑にあるが、芭蕉の句は「水とりや氷の僧の沓の音」というのが正しいらしい。
 だが私などは「籠り」の方がしっくりくる。本などを読むとそういう意見もけっこうあるようだ。

   お水取り・・・東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)は旧暦の時代は二月に行われていたので修二会(修二月会)だが、新暦になってからは主要な行事が三月となった。
 奈良では「お水取りが終わると大和に春が来る」と言われているが、それが旧暦二月なのか新暦三月なのか判らないがきっと旧暦二月だろう。しかし新暦三月上旬はまだ寒い日もあるからそんな細かい話はおいておいて、今でもテレビなどで「お水取りが終わると大和に春が来る」もしくは「春を呼ぶお水取り・・」と天気予報士などが解説している。

   修二会というのも「二月の行事」という、ある意味通称で、正式には「十一面悔過(けか)」というらしい。二月堂の十一面観音に懺悔する修行の法要だ。そのために堂内を椿の造花で飾るのだが、そのモデルは二月堂の下にある開山堂庭の椿の花である。
 赤い花に糊をこぼしたように白い斑が入るので、この椿は「糊こぼし」といわれる。
 ただ開山堂の庭は公開されてないので、塀の上に見える椿は幾つかあるが、それらしい椿を私は知らない。

 そんなことで、お水取りの期間に奈良(市)周辺の和菓子屋では「糊こぼし」とか「南無観椿」「開山良弁椿」「修二会椿」という和菓子が期間限定で発売される。
 写真は千壽庵吉宗の「二月堂椿」。
 この和菓子を目にすると「大和の春は近い」と実感する。

 孫の凜ちゃんの病院の合間に短時間だが1266回目の修二会に行ってきた。
 1266年間不退の行法だ。
 堂の奥に白布が掛けられ、多くの行はその奥で進められるが、炎に映された影が浮かんでは消える。と書くと静寂を想像されるかもしれないが、声明(しょうみょう)は白布に関係なく大きく届き、何よりも多くの行は堂内を走るかのように行われるので、その木沓の音は歌舞伎のさわりの舞台以上である。
 なので私は、朝に凍りついた沓を履いてコツコツ上堂する僧ではなく、五体投地を含む荒行をダンダンダンダンと走り回る堂内の籠りの僧の沓音だと思うのである。
 芭蕉さんは、ほんとうに「氷の僧」だったの?

   涅槃へと咒師が誘う修二会かな

4 件のコメント:

  1.  籠りの僧つまり練行衆のうちでも特に四職(ししき)と呼ばれる4人は上席に当る。四職は次の通りである。
     和上(わじょう) 練行衆に授戒を行う。
     大導師(だいどうし) 行法の趣旨を述べ、祈願を行う。事実上の総責任者。通称「導師さん」
     咒師(しゅし) 密教的修法を行う。
     堂司(どうつかさ)行事の進行と庶務的な仕事を行う。通称「お司」。

    返信削除
  2. なかなか出掛ける決断がつかないので友達から貰ったDVD(お水取り記録)を見ています。

    返信削除
  3.  それは正解だろうと思います。お松明などは人間が多すぎて少し興醒めです。しかし行そのものは厳しい行です。

    返信削除
  4.  天界(兜率天)で行われていた修行に倣いたいと実忠は考えたが、天界の一日は人間界の400年にあたるので、少しでもそれに近づこうと走って行をするのだと言われています。
     籠りの僧の沓の音は修二会の特徴です。

    返信削除