2016年9月30日金曜日

荒地盗人萩

   「可愛い花なのに盗人萩という名は可哀相」という方がおられるが、「何をおっしゃる兎さん」である。
 アレチノヌスビトハギ(荒地盗人萩)には、去年行なった特養の草刈りボランティアのときに散々な目に遭った。
 この草のことは誰でも周知のことだと思っていたが、意外にご存知ない方が多かった。

細心の注意を払ってこのとおり
   なので、洋服から頭の髪の毛まで全身「ひっつき虫」まみれになった女性まで続出した。
 その記憶があったので、今年のそのときには「ひっつき虫に気をつけて!」「ヌスビトハギに気をつけて!」と事前に徹底した私だが、高枝バサミを駆使して細心の注意を払っても写真のとおりだった。ズボンの裾は私の足である。なん人もがこうなったが、でも去年に比べれば特段に被害は減少した。

 このヌスビトハギ(写真はアレチノヌスビトハギ)の名前の由来は、田中修著「雑草のはなし」(中公新書)によると、
 「実の形が盗人が忍び足で、そっと歩く足の形に似ている」からとか、
 「盗人が爪先立って忍び足で歩いた足跡に似ている」とか、
 その外には、意訳すると「被害者に気づかれないうちにそーっとくっつく(仕事する)」から・・・と、書かれている。
 この「踵をつけない足跡」説は高名な植物学者の牧野富太郎説でもある。

 ネットでは、「日陰にこっそり咲く姿が裏街道を行く盗人と重なるから」説もあるが、これは日当たりの良い場所にも旺盛に咲いているから、事実に反する。
 事実に反するといえば、「ヌスビトハギはひっつくがアレチノヌスビトハギはくっつかない」という文がネットにあったが、これも真っ赤な嘘である。ちょっと歩けば30秒で真実は明らかになる。ネットには、こういう自分で確認もせずに文を載せる人がいる。困ったことだ。

 さて、先に書いた「名の由来」だが、しかし私の理解はそれらと違っていた。
 文献によるとか、誰かに教わったものではないが、その名前と、払っても払っても払いきれない強固なひっつき虫という特徴から連想して、
 「お主、昨夜越後屋に泥棒に入ったに相違なかろう」
 「めっ!めっそうもございません」
 「ええい、黙れ! その足もとについた萩の種が動かぬ証拠じゃ」
 と、盗人の証拠になったので盗人萩だとばかりに信じていた。ほんとうにそう信じていた。
 私が自信を持って語ったので、私の周辺では一定程度この説が広まっている。
 私も、生半可なネット人間と変わらない。ああ。
 でも、この説、ちょっと説得力と物語性があって捨てがたい説とは思いませんか。

2 件のコメント:

  1.  明日は高校の同窓会があります。宴会の前に前座としてゴルフと遠足が用意されています。私はゴルフができませんので、遠足に参加します。遠足の先は長谷やんのブログにも登場しています「高名な植物学者の牧野富太郎」にちなんで高知市にある「牧野公園」です。高知駅に集合してバスで行きます。少しウキウキしています。
     私も「ひっつき虫」には毎年やられています。服の始末が終わったと思ったら、後ろにもついていることが度々です。次は手袋を始末しようと座ったら、ひっつき虫の上だったこともありました。これも修行と諦めて一つ一つ剝します。

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  2.  土佐が産んだ偉人・牧野富太郎はその生涯が植物図鑑以上に面白いですね。
     「植物知識」(講談社学術文庫420円)のあとがきに、「もしも私が日蓮ほどの偉物(えらぶつ)であったなら、きっと私は草木を本尊とする宗教を樹立してみせることができると思っている。自然の宗教!その本尊は植物。なんら儒教、仏教と異なるところはない」とあるのも楽しい。

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