テレビのケンミンショーで、『天かすと麺汁に中華麺』という蕎麦を紹介していて、台本どおりみんなが「ええ!」「不思議だ」「初めてだ」「わあ美味しい」と盛り上がっていた。
それはさておき、大阪で「たぬき」といえば「きつねうどん」の蕎麦バージョンであるが、東京に行くと揚げ玉(天かす)の蕎麦のことで、大阪の「たぬき」は「きつね蕎麦」となる。
以下、私の書く「たぬき」は大阪の「たぬき」のことである。
さて、私が50年以上前に卒業した高校は伝統ある旧制高女を引き継いだものだからか、校内に食堂があった。
ホットペッパーにも出てくるから今も健在らしい。
で、その頃私が毎日のように食べていたのが「大(だい)たぬ*」で、麺の玉が二つ入った「たぬき」だった。(*たぬきの大だから)
要するに味の基本は「きつね」である。が・・・その麺は「中華麺」だった。
だから、ケンミンショーの騒ぎようが馬鹿みたいで、それは美味しいに違いないと私は想像するまでもなかった。
これまでも妻に、「高校の食堂のたぬきが美味しかった」という話はしていたが、結局50数年間食べては来なかった。
その重い蓋をしていた郷愁にケンミンショーが火をつけた。
なので、近くのスーパーで、一番安物の中華麺ときつね用の甘い味付きの揚げを買ってきた。うどん出汁は家にある。この場合、中華麺は一番安物でなければならない。
あとは薬味葱だけで、私は瞬く間に50数年前にタイムスリップした。
妻も「美味しいやん」と評価した。
なんということのない「たぬき」だが、郷愁に味付けされた「中華麺のたぬき」に私は大満足した。
ただ、私のような郷愁(思い出)のない方が食べれば、ただの安物の田舎料理だろう。
それでいい。重ねていうが、この場合、麺は一番安物でなければならない。
母校の学校食堂にその「大たぬ」が今もメニューにあるかどうかは知らない。
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