2016年8月4日木曜日

月見草

   厳密にいうと、月見草とは白い花のをいい、黄色い花のは正しくは待宵草というらしいが、私などは小さい時から月見草で来ているので許していただこう。
 早朝に散歩をしていたら咲いていたので嬉しくなった。我が家周辺では珍しい。

 この月見草(待宵草)は典型的なパイオニア植物で、荒地・痩せ地に咲く。
 そして、他の植物が育つほどに土が肥えてきたら姿を消す。
 それ故に、夜間にひっそり咲くという侘しさにプラスして二重にはかない花である。

 私の小さい頃の堺の街の中心部は、ある種の日本の原風景あるいは都市の典型のような「住宅と田畑と里山」というような風景は全くなく、「住宅と焼け跡」の街だった。
 だから普通に、街というのは「住宅と焼け跡」で成り立っているものだと小さい私は思い込んでいた。
 そして、そういうタイルの欠片などが散らばった焼け跡の空き地には、この月見草(待宵草)がいっぱい咲いていた。
 だから、「パイオニア植物である」という解説が実感としてよくわかる。

 といっても、パイオニア植物であるはかなさを知ったのはズーッと後のことであり、当時は空き地を飾る元気で綺麗な花だと思っていた。

 もとい、一見元気で園芸植物並に綺麗だが、そもそも月見草は大空襲の落とし子なのだった。 
 だから堺の戦争の記録集でも作るなら、月見草というタイトルも悪くない。
 焼け跡の花であり、復興の花だった。

 そんなわけで、南海ホークスの野村克也が「俺は月見草」と言ったときも、それほど屈折した感情が共感できなかった。
 月見草で何が悪いんや!と。

1 件のコメント:

  1.  駅前に結構大規模なマンション群の建設が進んでいる。
     それに伴って道沿い部分も綺麗?に植栽された。
     ただ、本体は工事中の為、植栽後の手入れは放っておかれているので、そこだけに月見草が咲いている。豊かな表土を取り去って植栽したので起った珍現象だ。
     最も人工的なところに最も非人工的な荒地が誕生した。

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