『そして、メディアは日本を戦争に導いた』・・凄い題名の本である。
いつもの様に、新聞の広告を見てから数日後に書店に行ったが、文春新書の書棚にそれは見つけられなかった。
題名はあやふやだったが半藤一利、保阪正康共著であることは憶えていた。
そこで、これまたいつもの様に検索をしてもらった。「題名は不確かだが”メディアは戦争に導いた”という感じ」「著者は半藤一利、保阪正康」「文春新書の新刊」・・・・
で、「あります」というから「いくら探してもなかったがなあ」というと、「新刊コーナーかも」といって探しに行ってくれた。
その答えは、文春新書とばかり思っていたが、文春文庫だった。
さて、1ページ目の半藤氏の書き出しはこうだった。
・・・・・平成24年(2012)4月、自民党は他党に先駆けて条文の形で「日本国憲法改正草案」を発表した。もちろん、第9条の論外の改悪は断固として許すことはできないが、それに比敵するくらい第21条の条文には愕然となった。その後でまさしく怒り心頭に発し、それを報道しただけの新聞に罪はないのに、ビリビリ引き裂いてしまったほどとなった。
その第1項は、いまの憲法とほとんど変わりはなく、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障」している。が、そこに付せられた第2項はいったい何たることか、とうてい黙許しがたい文言がならんでいる。写すのもけがらわしいことであるが、引用しないことには読者にはわからないゆえ、泣く泣く写すことにする。
「2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」
実は、この「公益及び公の秩序」の文言は、(略)要するに「権力者の利益」と同義であり、(略)そのことは昭和史にある歴史的事実が証明している。・・・・・
このように、一般にいう左派ではない昭和史の大家二人が、近頃のジャーナリズムの堕落を昭和史に照らしながら鋭く指摘しているのである。
参考になる箇所を引用したいが、そうすればブログの容量を大きく逸脱するし、550円+税という廉価な文庫本であるので、内容は購入して確認してもらいたい。
ただ、昭和史にはなかった言論封殺の暴力にも触れている箇所は新鮮だった。
それは橋下徹の朝日新聞・週刊朝日を計算ずくで狙ってやった劇場型の抗議という暴力のことで、・・・
保阪 橋下問題を通して、何かが崩れて、何かの扉が開いたという感じがします。
半藤 ・・・劇場型の抗議によって、ジャーナリズムをよろしくない形で脅かすことになったのは確かですが。
保阪 かつてのような熟成型の抗議というか、大人の社会の約束事によるケンカというか、そういう抗議が消えて、代わりに、より暴力的、劇場的なやり方をしてもいいんだという時代へと変わっていくのかもしれない。
半藤 あえて言ってしまえば、解決を求める抗議ではなく、一方的な相手を痛めつける暴力そのものに近づいてしまったなと感じます。
・・・などなど、ご紹介したい箇所は多いが止めておこう。
ビール代ぐらいの文庫であるからご一読をお勧めする。
昭和史の大家が、昭和一桁に似てきたぞ!歴史は繋がっているのだぞ!と現代人に必死に呼びかけている。
昭和の「戦前」を体験していない私などは、漠然と、9条を持つこの国がおいそれとは戦時体制にはならないだろうという希望的な気分がある。しかし近代史を眺めてみると、ほんとうに5年程の間に自由も民主主義も彼方に投げ捨てられ、家族であってもひそひそと話し合わなければならない時代が来たことがわかる。
返信削除戦争法廃止の国民的連合は真正面の課題だと思う。