2016年3月15日火曜日

同層生の熱い吐息

  「家族はつらいよ」は、すでにスクリーンで各種予告編などが終っていた頃に滑り込んだので客席を見廻す余裕がなかったが、スクリーンに同調する笑い声や息遣いの様子から、吉行和子演じる熟年の妻の「同層生」が多いようだった。

 セットにしても筋立てにしても台詞にしても、非常に無理がなく、そのリアルさが「怖い」ほどだった。

 主役級の蒼井優演じる次男のフィアンセが決定的な場面で橋爪功の義父に「お母さんははっきりと自分の気持ちを言ったのだから今度はお父さんがはっきり言う番よ」という場面があったが・・・、
 私に置き換えて考えても、「そうかもなあ」とはならないだろうなあという気になった。
 で、熟年の夫は決断に至るのだが・・・・、
 ストーリーは直接映画を観ていただこう。

 この家族にはある種典型的な非正規はいないし、シングルマザーもいない。
 30年ほど前に建てた家はいろんな意味で当時としては「中の上」以上に思われた。
 病気も介護も失業もとりあえずは心配なかった。
 そこがさらっとした喜劇に向いていたのかもしれないが、とはいっても企業戦士のOBとその現役(長男)がいてやはり現代ニッポン(東京)の縮図でもある。
 山田洋次監督が「東京物語」の続編と称した意図もよく解る。

 人は何故結果の解っている昨夜のナイターの新聞記事を読むのか?ということを遠い昔の機関紙学校で習ったが、「同層生」は、テレビの予告編等で十分知っている妻の台詞に、心地よい同調を求めて映画館に来たのだ。
 妻は、同年配のサークル仲間の”お茶”の席はこれと全く同じ台詞で溢れているという。
 だから、この映画を誘った我が妻も、そのことで婉曲に私に教育的指導を突き付けたに違いない。
 熟年夫婦見るべし!
 ただし、シナリオについて深く夫婦で議論しないこと。でないと、物語はスクリーンを飛び出して貴方に憑りつくかもしれない。

2 件のコメント:

  1. 浜村淳さんの映画紹介の様でますます観に行きたくなります。実は一人で観に行こうと思っていたのですが再考します。

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  2.  fbの方に道弘さんから『妻が「必ず観に行く」と言うております』と背筋が凍るようなコメントを戴きました。

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