2012年3月16日金曜日

ビジュアル雑誌の歴史に学ぶ

   この間から、十三塚や高野山、真言密教、高野聖、踊念仏、山伏などの文献を読みに国立国会図書館関西館に通っていると、3月中旬から館内で「ビジュアル雑誌の明治・大正・昭和」展が開催されだした。
 折角の機会であるのでフロアレクチャーにも夫婦で参加して観覧した。

 展示の名前どおり、知らなかった数々の雑誌や一部には懐かしい雑誌もあり、解説とともにそれは楽しいものだった。
 そして、妻が印象に残ったと言ったのは戦時中の国策プロパガンダ雑誌の「FRONT」だった。
 国内の紙も印刷術も疲弊して、一般の雑誌なども全く生彩を欠いていた時代(1942年~1945年)に、上質の紙と印刷で、何ヶ国語(創刊号は15か国語)もで出版されていたというのは聞き始めであったし、それよりも、表紙の写真にしても、単純でポンチ絵的な帝国主義賛美のデザインというよりも、テーマは別にして、現代でも通用しそうなレベルの高いポートレートではないかとの印象は同感だった。
 そうか、戦時下の為政者はそれほどまでにプロパガンダを重視していたのか。

 そんな思いで帰宅してからネット上のフリー百科事典ウィキペディアを開いてみると、「プロパガンダ技術の種類」として次のような記述を見つけた。
 1、 レッテル貼り― 攻撃対象となる人や集団、国、民族にネガティブなイメージを押し付ける(恐怖に訴える論証)。
 2、 華麗な言葉による普遍化― 対象となる人物や集団に、多くの人が普遍的価値を認めているような価値と認知度を植え付ける。
 3、 転移― 多くの人が認めやすい権威を味方につける事で、自らの考えを正当化する試み。
 4、 証言利用― 「信憑性がある」とされる人に語らせる事で、自らの主張に説得性を高めようとする(権威に訴える論証)。
 5、 平凡化― コミュニケーションの送り手が受け手と同じような立場にあると思わせ、親近感を持たせようとする。
 6、 カードスタッキング― 自らの主張に都合のいい事柄を強調し、悪い事柄を隠蔽する。本来はトランプの「イカサマ」の意。情報操作が典型的例。マスコミ統制。
 7、 バンドワゴン― その事柄が世の中の権勢であるように宣伝する。人間は本能的に集団から疎外される事を怖れる性質があり、自らの主張が世の中の権勢であると錯覚させる事で引きつける事が出来る(衆人に訴える論証)。
 以上の論の出展は知らないが、ある種妥当な論だろうと私は思う。
 そして、それは見事に某市長の立ち居振る舞いと重なって見えてくる。
 現代のプロパガンダの専門家といえばマスコミと広告代理店と芸能プロダクションだろうが、なるほど芸能プロダクション所属の市長だけのことはある。
 「FRONT」的なプロパガンダに熱狂した時代の終焉がああであったように、現代の異様なプロパガンダが目指している先も推測できる。
 「FRONT」の時代は終焉までにおびただしい犠牲が積み上げられた。
 その歴史に目を瞑るものは未来に対しても(比喩として)盲目である。

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