ヨーロッパの北の方にはセミがいないらしく、彼の地の人々は日本映画の蝉しぐれをただただ不思議な雑音と感じるらしい。
東大寺ミュージアムに行くと「銀製蝉形鏁子」という国宝東大寺金堂鎮壇具が展示されている。錠前、鍵である。これがなぜ蝉形なのか、考えると不思議だ。どこかに「玉蝉(ぎょくせん)」の思想が辿り着いた気がする。古代中国では死者の口の中に翡翠(ひすい)製のセミを含ませて納棺している。玉蝉である。蝉の羽化に「再生」を見て、死者に羽が生えて仙界に登るのを祈ったようだ。
仙人や天女(飛天)のルーツも中国よりも遥か西方と考えられるから、飛び回るセミを見ながら心はユーラシアに飛んでいく。
0 件のコメント:
コメントを投稿