2019年7月22日月曜日

蛙の話

   アイヌの文化についての本を読んでいて、フッと読み止まったところがある。

 アイヌでは蛙はオワッ(鳴声に由来)とかテ(跳ねるもの)と呼ばれ、もし家に入って来たときはすかさず炉の熱灰をかけて殺すというくだりでのことである。
 著者によると、「アイヌにとって湿地帯は嫌悪される土地であり、故にそういう地獄(湿地帯)の住人たる蛙は忌み嫌われるのだ」とあった。
 昔話にも、「残酷な村長が地獄に落ちて蛙にされた」「性悪の女が神に罰せられて蛙に生まれ変わった。だから蛙の手には女の手のような模様(刺青)がある」とあるらしい。

 私は2019年4月28日のブログで次のように書いた。
 纏向遺跡から人為的に傷つけられた蛙の骨が12匹分発掘された。
 最古の世界宗教ともいわれ、東西の古い信仰に影響を与えたゾロアスター教では蛙は「悪の創造物」とされ、信徒は熱心に蛙を殺した事実から、それは神饌(お供え物)というよりも、「さらし首」的なものではなかったかと。

 材料が少なすぎてこれ以上のことは解らない。
 別の縄文の書物では、北海道東部の続縄文やオホーツク式土器には蛙の表現は写実的であると、蛙に対して肯定的であったように感じられる。なので余計に解らない。

 ともあれ現代では両生類は地球環境劣化の一番の犠牲者のようでもある。
 毎年観察に行っている奈良公園吉城園のモリアオガエルも今年は少なくなっていた。
 義母は子供のころ、蛙を捕まえてはお尻に麦わらを刺してプーッと膨らましたうえでパンと叩いて殺して遊んだと、遠い記憶の昔話をした。それらがみんな昔話になってしまった現代人は本当に幸せになっているのだろうか。
 蛙は小さなストラップになって財布につけられ、「出て行ったお金がまたカエル」程度のお守りに成り下がっている。

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