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近くの樹木に抱きついて、落ちずにミーンミーンと鳴くのである。
後に本を読んで知ったことだが、これは軍隊内で実際に行われていた制裁の一種だった。20数年前(昭和20年8月以前)の軍隊内の制裁が未来を語る青婦部の昭和40年代の罰ゲームに変身していたのだった。
このゲーム、シャーッシャーッシャーッでもなく、ジリジリジリジリでもなく、ニイニイでもカナカナでもなかった。ツクツクホーシはあったかもしれないが、基本はミーンミーンだったように覚えている。それはさておき・・・
・・というほどセミといえばミーンミーンが相場になっているが、近頃滅多にその声を聞かない。
ミンミンゼミは森林性で暑さに弱く西日本の都市部ではほとんど棲息していないと昆虫図鑑に書かれている。
なので、西日本の都市部なら夏の終わりから9月、そしてクマゼミとは鳴く時間帯を棲み分けて偶に鳴くとも書かれていた。
8月29日未明、わが家の前でミンミンゼミが鳴いた。
何もかも昆虫図鑑どおりだと感心した。
それに、ミーンミーンはやっぱりセミの声の代表だ。
例によってファーブル先生はセミの幼虫や変態について詳細な観察と実験結果を私たちに教えてくれている。
その中では、アリストテレスが『「セミの母」の殻が破れる前のセミはもっとも美味である』と言ったことを追実験し、「どこの国のお百姓でも都会育ちの人をからかう癖があるもので、アリストテレスはそれを信じてしまったにちがいない」と結論づけているのがとても可笑しい。
お百姓つながりでいうと、室生犀星は「僕は蝉の顔の素朴さが好きである」「田舎に百姓がゐるやうに樹木に蝉がゐ、それが皆善良さうな顔付をしてゐる」と優しい。
朝まだき闇の奥から秋の蝉
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