椎名誠氏の代表作のひとつ「岳(がく)物語」を読んだのは今から30年前のことで、氏の長男の岳くんの何歳か後を追って成長する自分の息子とダブらせて楽しく読んだものだ。
その本の中で氏が、広場が公園として整備されるにしたがって「あれも駄目」「これも駄目」と規制されていく現状に憤っていたことに私は共鳴し、当時、自治会の役員として同じような問題に直面していたので「綺麗な運動場より、子供たちが自由に遊べるただの公園がよくないか」と岳物語を引用しながら新聞に投書をして掲載されたこともある。
その岳くんの3人の子ども、つまり椎名誠氏の孫に関わる「イクジイ」のエッセイがこの本である。
だから、新聞紙上で紹介記事を見た限り、これを買わないという選択肢は私には考えられなかった。
初孫誕生の連絡は外国(パタゴニア)で聞いた。
南米の厳しい嵐がやってくる前の日だった。そこからさらに奥地にいく小型飛行機が飛ぶか飛ばないかの瀬戸際だった。
海外での旅の停滞は嫌なものだから、ぜひ飛行機が出てほしい、と思ったが、パイロットは慎重だった。でもそういうときにいきなり「孫誕生」の知らせを聞いたものだから「パイロット無理すんな」と急に思考とタイドを変えた・・とは、冒険家シーナ氏の恥ずかしくも率直な感想だ。
今年71歳の氏がこの本のあちこちで、自分の息子や娘の子育てのときは奥さんに任せっきりで、孫を通じて初めてのように「子育て」を実感しているというくだりを読んだときには、私の胸にも共感と大いなる反省がジンジンと突き刺さった。
そして、親を送って・・子供たちが家を出て・・孫たちと接触する中で人生を思い『家族の時間は短い』と振り返った部分などは、諸行無常とでも言おうか、文句なく「そう、そう」と頷いてしまった。
余談ながら、世界を冒険してきたシーナ氏ならではの『遊牧民は花が嫌い』という文化や価値観の「異文化性」などの指摘のように、イクジイでなくても楽しい話題もこの本の中には豊富にある。
孫物語が、岳物語のときよりも格段に穏やかな展開に感じられるのも、椎名誠氏が歳を重ねたからか、読者である私が歳を重ねたからか、そんなことを思うと、私も淡々と「爺ばか日誌」をブログに書き溜めたいと再確認した読書であった。
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