2024年7月18日木曜日

切り抜き動画

   京都・岩倉の実相院門跡は、初夏には板の間に映り込む「床みどり」が、晩秋には「床もみじ」がとても美しい。 
 その広告のポスターは、左右にも無限に広がる石庭を想像させるが、私が訪れた何年か昔には、実際には、撮影したであろうポイントから少し先に出てみると、隣接する無粋なコンクリート製の建物が散見され、人間というやつはこうも簡単に「印象操作」されるものかと反省したものだ

 これと同じことが大規模に、いくらか深刻に繰り広げられたのが東京都知事選挙の石丸候補の選挙戦であったような気がする。

 それはスマホなどで大規模に拡散された『切り抜き動画』で、実相院のポスターがある種の切り抜きであったように、若い市長が、古い田舎の小ボスに「恥を知れ」と言い放つなどの短い動画が大量に拡散された結果、まるで自民党的古い政治家に立ち向かう若きヒーローが、一瞬にして「誕生」したかのようだった。

 政策はほとんど語らず、実際には自民党に繋がる人々による選挙態勢であるにもかかわらず、イメージだけでこんなに「支持」が集まる時代が現実だと思うと悲しんでいるだけでは済まない。

 選挙後に、その論法が「石丸構文」と揶揄されるような、まるで「ああ言えばジョウユウ」みたいな論理のすり替えであったり、問いには答えず逆質問ではぐらかすものであったり、橋下徹氏や維新そっくりな「ディペート術」であることがはっきりしてきたが、選挙は既に終了している。

 以前に中野晃一上智大学教授が「革新勢力もメッセージの伝え方を大いに工夫する必要がある」との主旨の提起をされていたが、ほんとうに大切なことだと思っている。

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