2月18日NHKBSプレミアムで「関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅イギリス第2回」を見た。「第1回」は体調不良で見逃した。今回もそんなものでボンヤリと見ていた。
20日間かけてイギリスを鉄道で巡る3080キロの旅の後半で、スコットランド第2の都市グラスゴーを出発。北アイルランド、ウェールズを経てイングランドのドーバーまでの旅が90分にまとめられていた。
全体の基調は牧歌的な美しい風景と素朴な人々の暮らしだったが、その素朴な人々の口から出てくる言葉は、映像に似つかわしくない郷土愛の深さとそれに相乗的に語られる対イングランド、対スコットランドなどへの「反発」の言葉だった。
経済格差とも相まって、こういう感情がEU離脱と絡んでいたのだと勉強させられた。
何よりも私が勉強不足であったと驚いたことは、北アイルランドのベルファストに実際にある壁だった。
壁というと、万里の長城は大昔だし、ベルリンの壁も崩壊した。現代問題なのはイスラエルの対パレスチナの壁であり、近未来はトランプのメキシコ国境の壁ぐらいしか理解していなかったが、ベルファストにはカトリック住民地区とプロテスタント住民地区を分ける大きな壁が現に存在し、その出入口は夜間には閉鎖されるのである。
成熟した先進国イギリスの深い闇を垣間見た。
以前にテレビで見ていた北アイルランド紛争は私の中では遠い存在だったが、いっぺんにそれが近づいてきた感じになった。
それでも、つい先日まで殺し合っていた人々が平和裏に暮らそうと努力しているのが現代なので、それはイギリスだけでなく「この丘の向こうは別の国」「この川の向こう岸は別の国」というヨーロッパの常識なのだろう。関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅でも多々触れられていた。
EUの理想は素晴らしいが、新自由主義的な経済は貧者をますます貧者にしていないか。
格差の底に民族差別、抑圧が現に存在しているようだ。
そこの不満がネオナチ的ナショナリズムの導火線に飛び火する潜在的条件は大きいように思われる。
先日はアイルランドの妖精話を書いたことがあるが、北アイルランドではその後裔たちが先住民的でカトリックで相対的に貧困層と言われている。しかし近年のテロの時代はIRA(アイルランド共和国軍)がどちらかというと主であった。
こうして関口知宏さんの鉄道旅行に付き合って、私は出口の見えない心の旅に巻き込まれてしまった。
トランプやヨーロッパのネオナチを批判することは容易いかも知れないが、「調査なくして発言なし」、世界の現状をもっともっと知らなければならないと反省させられた。
ダニー・ボーイの歌を口ずさみながら。
春荒れやピースウォールが映ってる
どこかの国では「戦闘」のことを「衝突」というらしいが、ベルファストの隔離壁は「ピース・ウォール」と呼ばれている。ああ、地球は繋がっている。
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