「息をするように嘘をつく」安倍首相が唱えているものの一つが『働き方改革』。
「改悪」を「改革」と不当表示して劇場型に宣伝するのは、小泉改革や橋下維新に学んだものだろう。
この『働き方改革』の問題点は順次指摘していきたいが、今日は、注目の「過労死ライン(基準)」について再確認(復習)しておきたい。
政府(働き方改革の担当は厚労省ではなく内閣官房。これもおかしいが)は労働時間について、看板では「改革」と称しながら、その内実は、「残業代ゼロ」法案(労働基準法改正案)の成立を期し「高度プロフェッショナル制度」導入と裁量労働制の対象拡大で、結局は「過労死は自己責任」にしようとしている。
さて、現行「過労死の労災認定基準」の労働時間は、『発症前1か月に100時間、又は2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性は強い』と定めている。
つまり、ひと月平均で80時間を超える時間外労働が2か月あるいは6か月までの数か月続いた状態で脳・心臓疾患を発症した場合には原則労災認定する(もちろん例外はある)と定めている。
なお、労働時間以外の、勤務形態、作業環境、精神的緊張等の負荷要因も考慮されるので上記時間以下であっても労災認定されることがあることにも留意が必要。
ここでいう「時間外労働」とは、1日8時間、1週40時間を超える労働時間で休日労働も時間外労働時間と評価する。
そこで、なぜ「1か月100時間」あるいは「2~6か月で、月平均80時間」の時間外労働が過労死ライン(基準)とされたかだが、それは厚生労働省が設置した『脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会』報告書によっている。
専門検討会は、10名の専門医(医師)により構成され、平成12年から13年にかけて延べ12回の会議を重ねて検討結果を取りまとめた。
その報告書は、いろんな症例の検討から、どういう労働環境の患者に明らかな有意性が認められるかというようなことが詳細に検討された大著となっている。
その内容を一言で記すことは難しいが、大胆に摘んで言えば、長時間労働が脳・心臓疾患に影響を及ぼす理由は次のとおりだと指摘している。
① 睡眠時間が不足し疲労の蓄積が生ずる
② 生活時間の中での休憩・休息や余暇活動の(疲労回復の)時間が制限される
③ 長時間に及ぶ労働では、疲労し低下した心理・生理機能を鼓舞して職務上求められる一定のパフォーマンスを維持する必要性が生じ、これが直接的なストレス負荷要因となる
④ 就労態様による負荷要因(物理・化学的有害因子を含む)に対する曝露時間が長くなる
その上で、疲労の蓄積の典型として睡眠不足を指摘して、睡眠時間が・・・
● 6時間未満では狭心症や心筋梗塞の有病率が高い
● 5時間以下では脳・心臓疾患の発症率が高い
● 4時間以下の人の冠(状)動脈性心疾患による死亡率は7~7.9時間睡眠の人と比較すると2.08倍・・・と述べている。
さらに、以上のことを総務庁の社会生活基本調査とNHK放送文化研究所の国民生活時間調査に当てはめて1日24時間から「逆算」して、
● 6時間程度の睡眠が確保できない状態とは、1日8時間の労働時間に4時間程度の時間外労働が1か月継続した状態、つまり、おおむね月80時間を超える時間外労働
● 5時間以下の睡眠は、脳・心臓疾患の発症との関連性ですべての報告で有意性があるとされているが、それは1日5時間程度の時間外労働が1か月継続した状態、つまり、おおむね月100時間を超える時間外労働となる・・・と指摘したわけである。
以上が、月80時間以上の時間外労働が過労死ラインと言われる理由である。
故に、36(さぶろく)協定(労使による時間外労働協定)であってもこれを超えることは医学上、人道上許されることでなく、企業はそういう労働時間の範囲内で繁忙期に対処できるように人員を確保すべきである。
人の命より尊い業務などない。
この範囲(労働時間)では対処不可能な人員(体制)であるのに高い業務目標を指示し、働き方は多様で自由で任せたと言って使用者責任を回避しようとするのは欺瞞である。
こんな法案を成立させたら、過労死はみんな自己管理ができなかった故の自己責任だとされてしまう。過労死促進法である。
県境を越えた途端の吹雪かな
奈良県北部の開発は進み平城山(ならやま)の面影は消えかかっている。なので、普通に幹線道路を北へ走っていると街の真ん中で知らぬ間に京都府になる。それでも、ちょうどその辺りで天候が大きく変わることがあり、昨日もきっかり県境で晴天から吹雪に変わった。「風神たちも天気予報を聞いているに違いない」「律儀な奴や」と夫婦で頷きあった。
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