2013年1月31日木曜日

尋ねられる意味

  友人の『ひげ親父』さんから梅酒の梅をいただいた。
  外泊の義母に「友達の漬けた梅酒の梅やで」と言って食べてもらった。
  「梅酒には氷砂糖を入れるんやったかなあ」と言うほど年老いた義母であるが、齧るとすぐに「(梅を壜から出すのは)ちょ っと早いな」「もうちょっと黒(くろう)なるまで置いとかなあかんな」と、記憶というか感覚がよみがえってきたようだ。

  この話は何回かブログに書いたことなのだが、全く寝たきりに近かった義母が変化を見せたのは、そもそもが『ひげ親父』さんの梅酒だった。
 「友達に梅酒の梅の引き上げ時期を尋ねられているんやけど」と私が言ったのが最初だった。
  そして、その答えは「そんなんは飲んでみたらええねん」という予想外の大正解だった。
 さらにそれから暫く、義母は私に会うたびに「梅酒はこういう風に漬けまんねん」「飲んで美味しなったら上げたらよろし」と、何回も何回も梅酒の解説を繰り返した。これにはほんとうに驚いた。
  義母は、新しい情報を強迫的に受け止め苦しくなる症状のため、医師の指示により、できるだけ外界からの情報を遮断し、安静に寝たきりのように接してきたのだが、この梅酒の話は義母に、「私が娘婿に尋ねられている」「教えてやらなければ」という長い間封印されてきた前向きの気力を苦痛ではなく、ぐぐっと呼び起こしたようだった。
  それから、・・・・・・一つは義母の介護のために、もう一つは私自身の「目から鱗」の民俗学のために、無理のない程度に、ちょっとずつ義母の思い出話を掘り起こす旅を始めたのだ。これは全く予想外の楽しい展開だった。

  だから『ひげ親父』さんの梅酒の梅は、義母の介護のキーストーンであったのだ。
 今回は、いただいた梅が呼び水になって、我が家の梅酒と梅も持ち出した。
 と、「〽よよいのよい」と手踊りを踊りだしたあと、気持ちよさそうに居眠りを始めた。ああ、梅酒は人生の良薬である。
 
  当たり前のことであるが、人生は(介護など)知らないことを発見し続ける旅なのだ。
  皆そうして悩んで克服して歩いてきたのだろう。
  介護の先輩諸氏からささやかであってもコメントをいただけるとありがたいが。

2 件のコメント:

  1. 些かなりともお手伝いが出来たのならば望外の喜びです。飲んでよし、食べて良し、梅は心にも効く良薬なり!

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  2.  梅酒の歴史はよくは知りませんが、元禄時代の「本朝食鑑」には出ているそうですね。
     梅酒は良薬。現代人は、つまらんサプリメントを探すよりも先人の知恵を探す方が有意義でしょう。

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