2023年11月12日日曜日

丹(に)のこと

   万葉集にある、あをによし奈良の都は咲く花の薫ふがごとく今盛りなり の「あをによし」をただの枕詞と読み飛ばすのは惜しい気がする。
 「青丹よし」の「青丹」は「青い土」とするのが多数派のようだが、私は奈良の都の寺社などの「青(緑)や赤の塗装の豪華さ」と読みたい。赤い丹の多くは水銀朱・・。
 
 水銀朱は縄文時代の遺物からも検出されているし、魏志倭人伝にも「其山有丹」と記されている。古墳では最初期の大型古墳である桜井(外山)茶臼山古墳も石室に全面的に塗られていた。そのように多用されている。
 青銅にしても鉄にしても、そして丹である水銀にしても、古代の知識や技術の高さには舌を巻く。「はじめ人間ギャートルズ」は大きな誤解だ。

 丹は、奈良県でいえば宇陀や吉野で採掘されていたし、丹生と付く神社や地名が残っている。

 余談ながら、過日あるところで、職業病である脳・心臓疾患の労災認定について語った折、この国で最初の大規模な職業病は奈良の地で、大仏さまの金メッキの際に大規模な水銀中毒が発生していたはずだとマクラで振ったが反応はいまいちだった。

 余談その2、中学生の頃、町工場の前の道端に水銀温度計がいっぱい捨てられていて、悪ガキどもはそれを割って水銀を取り出し、帽子の校章に塗ってピカピカに光らせていた。もちろん、指そのもので磨くように塗っていたのだから、当時はこんな水銀といい、あるいは石綿といい、普通に子供のそばにあって遊んでいた。知らないということは恐ろしい。

 未来の人々は、原発を並べ立てた20世紀・21世紀の日本人のことを、やっぱり「知らないということは恐ろしい」と振り返ることだろう。

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