2023年11月25日土曜日

共感革命を買う

   タイトルが「共感革命を読む」でないのは、この本の内容があまりに深すぎて、「読んだ」などとは恥ずかしくて言えないからである。

 私は本を買うのに十分検討したりせず、けっこう感覚的に買うものだから、時々は詰まらない本を買ってしまったりする。
 その延長線上で、この本は、第一に山極壽一という著者に魅かれて買った。
 コロナの真っ最中に「人は集い交流しなければならない」などと、あのタイミングで言うか!というような主張が新聞に載っていて、単なるゴリラの先生、元京大総長というような人ではなさそうだと思っていた。

 それでも、ゴリラ社会の分析から導き出した新しい進化論、あるいは新しい文化人類学みたいなものでないかと読み始めたのだが、結論からいえば、自然科学の実証主義的な言葉で語る、歴史観や哲学の本だと言えそうだ。
 後になって、本の表紙の帯に「共感が世界を破壊する」と書いてある意味も解ってきた。
 この本は一旦読み飛ばした後で机の端あたりに置いておいて、そしてゆっくり読み直すべき本だろう。

 大目次を掲載しておく。
序 章 「共感革命」とはなにか——「言葉」のまえに「音楽」があった
第1章 「社交」する人類——踊る身体、歌うコミュニケーション
第2章 「神殿」から始まった定住——死者を悼む心
第3章 人類は森の生活を忘れない——狩猟採集民という本能
第4章 弱い種族は集団を選択した——生存戦略としての家族システム
第5章 「戦争」はなぜ生まれたか―—人類進化における変異現象
第6章 「棲み分け」と多様性——今西錦司と西田幾多郎、平和への哲学
第7章 「共同体」の虚構をつくり直す―—自然とつながる身体の回復
終 章 人類の未来、新しい物語の始まり——「第二の遊動」時代

 ロシアのウクライナ侵略やイスラエルの「報復」(私はハマスのロケット弾も批判しているが)を見ていると、地球上で戦争は避けられないのかと考え込むし、究極の暴力(軍事力)でしか平和は達成できないのかと頭を抱え込むが、この本は決してそうでないという未来を提示している。
 心ある人は必ず購入しておいて、こういう話を語り合うべきだろうと思った。河出新書。

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