2023年11月11日土曜日

卑怯な脱法主義者

   雇用主と労働者は本来対等ではないという現実の大前提から労働法という概念が生まれている。
 もし対等平等ならば互いに契約したどんな条件ででも働けばいいだけだ。
 それでは実際には長時間労働も低賃金も野放しになり奴隷労働になるから労働法がある。

 そして対等平等に近づけるために団結権(労働組合をつくり加入する権利)、団体交渉権(協約締結権)(使用者は誠実に交渉に応じなければならない)、団体行動権(争議権)が労働者に認められている。
 こんな中学校教科書みたいなことを大声で言わなければならないほどこの国の労働の「常識」は昨今歪んでいるように思う。

 昔、ある工場で無茶苦茶な労働条件がまかり通っていた。
 そのときの雇用主の言い草は、「彼はあの機械を貸して働いている下請けだ」という屁理屈だった。早い話が使用者責任を煙にまこうとする卑怯な脱法行為だった。それはもちろん許されなかったが。
 近頃のギグワーカーを見ていると、こういう話は手を変え品を変え出てくるものだとため息が出る。
 私は労働者派遣法ができたのが悪の出発点だと思うが、今さら言っても・・と情けない。

 この話の先にはパワハラがある。
 雇用主をはじめ権限が上位の者が無理難題を押しつけるいじめである。
 だからそういう雇用上の優位者は厳しく己を律する責任がある。それが法の主旨である。使用者責任である。

 今般、タイガース、バッファローズのパレードについて吉村大阪府知事が職員にボランティアとして参加を要請したが、ここで問題になるのは知事は行政官としての知事でもあるが、同時に職員に対しては雇用主・使用者であるということである。
 行政官の知事が府民にボランティアを募るのは行事の性格は別にして有り得ることだろう。
 しかし、使用者である知事が職員に要請すれば、それが勤務評価につながるのではないかという当然の心配、つまり圧力になり、忖度、つまり実質的な強制力を生むことは常識的に理解できる。

 それでも要請したい場合は、労使交渉に乗せて誤解を生まないように話し合い、労働組合の合意を得なければならない。それが労働法の精神である。
 そういう法の精神に目をつぶって、「いやいやボランティアを呼び掛けただけです」というのは卑怯千万、早い話が嘘である。
 このような「言いかえ」「言い逃れ」に類する脱法行為が不問に付されてよいものだろうか。
 ボランティアには通勤災害も業務上災害(労災)も適用されないぞ。
 「善意」を食い物にするような風潮を「美談」にしてはならない。

2 件のコメント:

  1. 吉村大阪府知事の、タイガース・バッファローズのパレードへの職員に対してのボランティア要請のニュースに、私も同じようなことが頭をよぎりました。
    万博の宣伝に利用したかっただけでしょう。クラウドファンディングで募ったカンパも予想外れであまり集まらず.....。
    これ以上傷が大きくならないうちに万博の中止を決断するのが賢明です!
    (ケンタ)

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  2. ケンタさん、まったく同感。メキシコは撤退した。外にも撤退を申し出ている国が出ている。万博は早々に中止すべきですね。

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