2023年11月8日水曜日

時代来たれり

   5日の朝日歌壇に次の歌があった。 
 兜虫の幼虫焼いて食べていた進叔父さんの時代来たれり (佐世保市 鴨川富子)で、馬場あき子選、佐佐木幸綱選だった。
 
   いうまでもなくSDGsにも繋がる時代の注目、昆虫食を踏まえている。
 そうか、最先端というか、ようやく時代が追い付きつつあるととらえて愉快な歌だ。

 私が愉快に思ったもう一つのポイントは、義母の思い出とダブったからで、山間部の農家の娘であった義母はおやつも自給自足で、その一つがアシナガバチの幼虫で、それを指でつまんで食べると甘くて美味しかったと介護の日々に聞いていた。

 長野の伊那谷などではスズメバチの子を捕る地蜂とり・スガレ追いが有名で、蜂の子の佃煮は土産品でもあるが、晩年の義母が老人ホームで語ってくれたのは、その手つきや私のデッサンではアシナガバチの巣で、幼虫は佃煮なんかにはせず、ただそのまま口に入れていた。

 もちろん、昆虫食が時代の要請などというレベルではなく、熟した木の実を摘むのと同じように、普通の子どもの普通の日常だった。
 ただ、義母のいた地域だけでもなく、広い地域でも、文献上では、子どもたちがアシナガバチの幼虫をそのまま食べていたというような記録は読んだことがないので、私のこのメモは民俗学上ではもしかしたら貴重な記録かも知れない。
 あるいは、田舎では当たり前すぎるほど当たり前のことで、それを驚いている現代人の私の方が記録すべき問題児なのかも。

0 件のコメント:

コメントを投稿