先日、NHK全国俳句大会が放映されていて、中休みのような間に司会が季語について選者に振ったところ、夏井いつき先生が比較的柔軟に考えたいと言うのに対し、伝統俳句協会の坊城俊樹先生は「僕は季語に恋をしている。故に夏井先生は僕の恋人にはなり得ない」と述べて可笑しかった。
ああ、ここに金子兜太先生がおられれば何と言っただろうかと想像した。
如何にもNHK的な当たり障りのないご披露で終わっていた。
私は兜太氏の「俳句入門」を持っているが、その最初の章のタイトルがそも「季語にこだわらない」である。
念のために断れば、兜太氏の主張の力点は「率直に生活実感を!」にあり、季語を軽視せよと言っているものではない。
それでもこのタイトルをトップに持って来たのには兜太氏の「生活実感」にこだわる信念が感じられる。
昨年7月まで毎日毎日「平和の俳句」の選者を務められてきたのと同様の信念が感じられる。
花鳥風月にはどうにも収まらない人間を詠まずして何の芸術か!と。(これは私の勝手な想像)
氏は昨夏、東京新聞等の「平和の俳句」の選者を引かれた。
そして、この1月からは朝日俳壇も、そもそも氏を含む4名の選者であったのが、紙面構成上も極めて歪な3名の選者によるものとなっていた。それは私を含む読者に不穏な想像を与えるに十分なものだった。
事実、2月19日付け「朝日俳壇・朝日歌壇」にはこんな句や歌が掲載されていた。
兜太選紙面に探す寒の朝 (横浜市)下島章寿
冴え返れ兜太戦後を終はらすな (鹿児島市)青野迦葉
「アベ政治を許さない」人病みたまうアベ政治なお続く厳冬 (水戸市)中原千絵子
兜太選休みの月曜ものたりぬ木の芽ふくらむ春待遠し (倉吉市)谷本邦子
もっと以前からこの傾向はあったが、最新の状況を摘んでみた。
その翌日20日、氏は98歳の生を閉じられた。
弔句をひねるのは止そう。揮毫に込めた意思をこそ継ごう。
薄氷(うすごおり)砕けよ墨書複写する
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