2018年2月5日月曜日

リアリストは誰だ

茅ヶ崎市立小学校
   先日に続いてリアリズムということを考えたい。
 昭和16年1月に岡田菊三郎陸軍戦備課長が東条に「米日の国力は10対1」と報告したが、軍は無理やり希望的諸条件を無茶苦茶に付けて5対1と誤魔化し、東条は「そのくらいは精神力で挽回できる」として開戦した。
 こうして徹底したリアリズムの軽視、精神主義が帝国軍隊の侵略、加害、被害を生んでいった。

 その昭和16年、山田耕筰作曲大木惇夫作詞の歌謡「なんだ、空襲」は「最初一秒ぬれむしろ かけてかぶせて砂で消す 見ろよ早技(はやわざ)どンなもンだ、もんだ」「なにがなんだ空襲が 負けてたまるか、どんとやるぞ」というものであった。
 実際に「焼夷弾はハタキで消せ、スコップで屋外に投げ出せ、消さずに逃げるのは犯罪だ」と命令されていたし、この調子は原爆投下後も「新型爆弾は初期消火せよ。頑丈な壕は直下で平気」と新聞(8月9日朝日)を通じて国民に指示がされていた。これが70数年前の日本の常識だった。

 当時のマスコミは「アメリカ人はガムを噛んでダンスをしているだけの民族だから皇国精神にあふれる日本男児が負けるわけがない」、『レディーファーストの国だから奥さんが「あんた、戦争なんか行っちゃダメ」と言うと戦争なんかできるはずがない』と繰り返し、「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」=生意気な中国を懲らしめろと煽った。

   昨年から各地でJアラートの避難訓練というものが行われている。
 テレビの画面では市役所で職員が机の下に屈みこんでいた。小学生たちは輪になって頭を覆っていた。
 この国は70数年前に先祖返りしたのだろうか。
 これを見て立派な実践的な訓練だと感じたとしたら、冷静に見てその方は「お花畑的空想家」ではないか。
 なので1月23日に「軍事ジャーナリストのリアリズム」を書いたが、ミサイル迎撃態勢について再度述べる。

 日本には弾道ミサイル防衛能力(BMD)を持つイージス艦が4隻あり、うち2隻が通常日本海にいる。
 イージス艦には迎撃用ミサイルSM3が各8発搭載され、撃ち洩らさない様一度に相手のミサイル1発に対して2発発射する。全弾命中しても1隻で4発の相手ミサイル対応、日本海の2隻で計8発対応で任務終了となる。

 イージス艦が撃ち洩らしたミサイルは短射程(射程20キロ弱)のパトリオットPAC3で迎撃することとなっている。
 PAC3は2基1セットなので32基16セット配備されている。
 16セットのうち5セットは首都圏に、2セットはアメリカ本土向けのコースの函館周辺に、4セットはグアムコースの中四国に現在のところ配備されている。
 掲載した地図のとおり、幸か不幸か近畿と中部は丸裸である。仮に滋賀の饗庭野基地に配備されたとしても半径20キロ弱ではタモ網で野鳥を捕ろうとするようなもので、京阪神に向かうミサイルからは近畿、中部は守れない。
 PAC3は自走発射機に4発ずつ入れ1セットで一度に2発発射する。1セットで相手のミサイル4発に対応すると任務終了となる。

 そもそもこれらの想定が「飛んできたピストルの弾をピストルの弾で撃ち落とすのと同じだ」という質的な問題を脇に置いても、これで200乃至300発はあるといわれる「ノドン」、30発はあると言われる核弾頭を封じるというのだから軍事ジャーナリストがこんなものは「儀仗隊」のようなものだというのが当っている。

 「北朝鮮の核やミサイルが心配だ」という多くの国民も、だから「やってしまえ」と言う前に以上の事実をリアルに確認してほしい。
 中学校の不良グループどおしが虚勢を張って脅し合っているのではない。
 北朝鮮の軍事挑発を止めさせようと真剣に考えているのは安倍政権ではないと私は考えている。
 ほんとうに軍事力を増強すれば平和が来るのか、北の核やミサイルを一瞬にしてほんとうに迎撃できるのか、「そのようにしたい」という人も一度立ち止まって冷静に議論しないか。

 中学校の社会科で戦争の陰に死の商人ありと習ったが、2023年に陸上に配備予定の迎撃システム、イージス・アショアは1基1000億円×2基とか4基とか。
 そのミサイル、1月31日米軍はハワイ沖の実験で去年に続いて再び迎撃に失敗したと発表した。
 そしてトランプは、小型の核爆弾で先制攻撃する準備を本格化し始めた。
 安倍首相は平昌五輪の際に文大統領に米韓軍事演習をけしかけると報じている。
 ああ、ほんとうに冷静に議論しませんか。

 マスコミは売れるようにと記事を書くあのリアリズムをいつか忘れん

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