2017年4月29日土曜日

徳利があった

   2016年9月3日に黄星徳利蜂(キボシトックリバチ)のことを書いた。
 親蜂を見つけたその時は、どこかに徳利がある筈だがと庭中を探したが見つけられなかった。
 今回たまたま物置の近くでそれを見つけた。
 巣立っていった出口を目の中で塞いでみると、見事な船徳利に見える。

 トックリバチは「武道を職業にしているのにその住居は一つの芸術作品だ」とはファーブル先生の言。続けて、「私の思い付きを述べることを許して貰いたい。昆虫にも一つの美学がないであろうか。少なくともトックリバチには自分の作品を美しくしようとする傾向が見えるように思う。事実を述べて見ると・・・」と詳細な観察記録を感動しながら叙述している。

   ファーブル昆虫記は、前回書いたとおり、この狩人蜂が子ども(卵)のために獲物を殺さず昏睡状態にしてトックリ中に保管すること、
 昏睡状態の大きな獲物が動いても卵が壊れないような卵宙吊りの妙、
 そもそも獲物を殺すよりも何百倍も難しい麻酔の方法・・・が詳細な観察と実験記録で何ページも費やされて書かれている。

 最新の宇宙物理学なども驚きがいっぱいだが、ファーブル先生が観察した昆虫はある意味それ以上に未解明で驚かされる。

 日本では、私のようにファーブル昆虫記の一部しか読んでいなくても、ファーブル昆虫記という名前と「聖(ひじり)たまこがね(スカラベ)」の話ぐらいは多くの人が知っている。
 しかしフランスに行って(学者でない)普通の庶民と話をしても、「ファーブル?それ誰?」という程度なのだと読んだことがある。ファーブル先生はフランス人でその主な舞台は南フランスなのに。

 つい先日も生態・環境保全学の岩崎敬二先生から聞いた話だが、日本映画を輸出した折に、「雑音が多い」と不評だったという話も有名な話で、蝉しぐれや秋の虫の声で季節感やある種の心象風景を感じる私たちは地球上では圧倒的な少数派らしい。
 だから、何でも自分の持っている情報や思考回路が世界標準などと思わない方が良い。
 これはけっこう大事な観点ではなかろうか。

    顔中に証拠残して鶯餅
 

3 件のコメント:

  1.  イタリアと南仏以外の欧米人はセミの鳴き声を知らず、明治の頃日本に来た人は「鳴く木がある」と不思議がったらしい。岩崎先生の話では、世界の生物学者が集まった会議でも多くの人は蝉の声を知らなかったという。だから、鳴き声で蝉の種類が判るという日本人は世界的に見ると驚異の民族らしい。

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  2. 昔、バブル華やかな頃NHKの世界の民族音楽祭典というTV番組がありVTRに残していますが中国のミャオ族の歌と踊りの中で(ちょっと文章には出来ませんが)「ミー、ミー」「テュルルルル・・」という声の女性の合唱があり。解説者(立松和平氏)は蝉の鳴き声を模していると言っていました。昔のNHK番組は良かった!?

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  3.  スノウさん、コメントありがとうございます。ミャオ族等雲貴高原の少数民族は元々は長江下流域に住んでいたが北方の漢民族に追われて雲貴高原に逃げたと言われています。その折に、海に向かってボートピープルになった一群が日本列島に稲作弥生文化をもたらした弥生人だという説がありますが、スノウさんのコメントはその説を補強しているように思います。

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