2017年4月24日月曜日

テロリストのお情け

   4月22日付け東京新聞の『本音のコラムーテロの標的』というのがFBにあった。興味が湧いたので、記事の中にあった本の著者のユスリー・フーダを検索して「図書館情報」を当ってみた。
 残念ながら国立国会図書館は東京本館にしかなかった(関西館にはなしだった)が、奈良県立図書情報館に1冊あることが判ったので車を飛ばした。

 情報館には、目指していた、ユスリー・フーダ著、師岡カリーマ・エルサムニー訳、『危険な道ー9.11首謀者と会見した唯一のジャーナリスト』白水社・・があった。

 私が先のコラムで一番興味を持った箇所・・そこには、アラブ世界でもっとも有名なジャーナリストである著者に対してアルカイダの幹部のムハンマド・アタ―が9.11後にこう語っていた。

   「(9.11の)標的について話し合うなかで、始めはいくつかの原子炉を攻撃することを考えた。しかし、収拾がつかなくなる恐れがあるので、やめた」。「・・最終的に私たちは、核関連施設を標的から外すことにした。少なくとも今のところは」。「今のところは、と言ったら、今のところは、という意味だ」「標的の選択は、できるだけ多くの死者を出し、できるだけ広範囲な混乱を引き起こし、最終的にはアメリカが、アメリカの地で、世界中が見ている前で、大打撃を被ることを目的としてなされた」と。

 これを読んで私は「やっぱり」と納得した。
 一時は、アルカイダでさえ原子力発電所の破壊が最も効果的だと考えていたのだ!!!
 9.11がアメリカの原発でなかったのは、以後のイスラム世界を含む国際世論を勘案して「今のところは」外しただけであった。
 テロリストの「分別」と「お情け」で今があっただけなのだ。
 ということになると、・・同じこと(つまり原発を標的にすること)を金正恩や北の指導者が考えないと思うのは、余程の楽天的なお人好しか世間知らずとなる。

 トランプと安倍晋三は、金正恩の「分別」と「お情け」を信じてチキンレースを仕掛けているのだろうか。何ということだ。
 テレビの中のコメンテーターたちが、「トランプにはすべての選択肢がある」というようにある種の危機感と「明るい展望??」を煽っているが、北のミサイルは日本人を除けて米軍基地にだけ着弾すると本気で思っているのだろうか。金正恩は絶対に原発を狙わないと本気で思っているのだろうか。彼らが窮鼠猫を食む前にピンポイントで「ボタンを押せる指導者全員」を一人も残さず「瞬殺」出来ると思っているのだろうか。だとすれば、あまりにリアリズムに欠けた夢物語ではないだろうか。

 そう、リアリズムの眼を以て考えてみると、仮に戦争が回避されてアメリカの航空母艦が北朝鮮海域から離れたとしても、「パワーを見せつけたので核開発は遅れることだろう」とかなんとかのトランプ流の解説を取って付けて、結局、その種のマスコミのおかげで「共謀罪」法案が通り、防衛予算が大幅に増額されたら、それだけでウハウハと喜ぶ面々が日米に少なくないということに誰もが気づくだろうが、それでは遅い。

 だから、いくら酒席の話としても、金正恩の先制斬首作戦など肯定的に語るのはやめよう。
 酒席の話としては、『安倍は国内で窮地に立ったら、金正恩に「ミサイルを発射して!」と頼んでいるらしい』というジョークぐらいにしておくべきだろう。

   川柳 連休にどこに行きたいと子にいわれ

2 件のコメント:

  1.  トランプは空母カール・ビンソンを北朝鮮近海に派遣と述べ、安倍政権と日本中のマスコミが「先制攻撃も辞さず」と楽しそうに語ったが、その頃カール・ビンソンはスマトラ沖を南に向いて航行していた。
     トランプもマスコミも一切信用がならない。
     「核兵器を含む圧倒的で効果的な先制攻撃」を期待するかのようなコメントほど、無責任でリアリズムに欠けた報道はない。
     偽りの報道と熱狂ほど怖いものはない。

    返信削除
  2.  24日朝日朝刊一面トップ記事の見出しはこうだ・・
     【海自と米空母、共同訓練 西太平洋 北朝鮮を強く牽制】
     小さな小さな事柄かも知れないが、こういう積み重ねが「戦前」を作っていくのでしょうか。

    返信削除