そこで、もう少し確かめたくなって、20日、開館時刻を待って国立国会図書館関西館へ行き、中央防災会議平成20年3月発行の『災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 1923関東大震災 第2編』の貸出しを受け、問題の該当部分と想定される「第4章 混乱による被害の拡大」部分43ページをコピーした。(余談ながら、A4×1、A3×21、セルフコピーで650円は少し高くはないか)
読んでみて、朝日新聞記事どおり「内容的に批判の声が多かった」ので内閣府がHPから削除したのだとしたら、文字どおり「災害教訓の継承」に対して不真面目な態度だと私は思った。
諸外国の例を見ると大規模災害に乗じた暴動は少なくない。
わが国でも、成立した「ヘイトスピーチ解消法」という法律が必要であると与野党が合意したほど潜在的な不安要因は膨らんでいる。
そう考えると、すこぶる真面目に中央防災会議が過去の災害を検証して教訓を未来に生かそうとする「報告書」を、内閣府は広めようとしこそすれ、それをHPから削除することは適切でない。
この章のまとめ的部分(P213)で報告書は、「住民や被災者の立場に立ったなら、人命救助はもちろん、消防の備え、炊出し、避難民の収容など、できる範囲で少しでも多くの人命を救い、また、多くの安心を与えるように行動することが、直接その人々を助けるだけでなく、混乱を予防して無用の災害拡大を防ぐ最善の方策である。災害が大規模であれば、テロとの関係などある程度の流言は避けられないし、混乱に乗じた犯罪も発生する。しかし、テロリストをにわか作りの自警団が捕まえることは、通常不可能である。一方で、人々が地域で協力し合いながら活動することは犯罪を予防するし、その中で、手近なカメラで街頭の状況を記録すれば、防災上の資料となるとともに、犯罪の防止にも効果があるだろう。治安の維持は災害に立ち向かう上で重要であるが、直接的な警備だけで達成されるものではない」と書いていることなどは極めて大切な示唆である。
流言蜚語による朝鮮人の被殺傷者数は確定はしていないが、朝鮮総督府が死者・行方不明者832名に一人200円の弔慰金を支給した事実は、日本人の死者・行方不明者には一人16円の御下賜金であったことと比べても『特異な死亡』だったことを裏付けている。
こういう流言蜚語を原因として日本人が朝鮮人に対して行った大量の虐殺を歴史の裏に隠したい人々が内閣府に「抗議」したのだろうか。
また「コラム8 殺傷事件の検証」では、震災に乗じて9月3日に労働運動家・川合義虎ら10名が、労働争議で敵対関係にあった亀戸警察署に捕らえられ、習志野騎兵第13連隊によって亀戸署内あるいは荒川放水路で刺殺された「亀戸事件」や、9月16日に東京憲兵隊甘粕正彦憲兵大尉らによる大杉栄他2名殺害の「甘粕事件」にも触れているが、この種右翼の先輩たちによる無法な残虐行為を歴史の裏に隠したいというのが動機だったのだろうか。
想像すれば、ここがポイントかもしれない。
私には至ってまじめで学術的なレポートだと思えた。
ヘイトスピーチ団体や日本会議周辺の右翼の「抗議」によって内閣府がHPから削除したのであれば、安倍内閣のモラルハザードも極まった感がある。
街老いて泳ぐ鯉なき五月空
【追記】 朝日新聞20日付け夕刊によると、内閣府は「削除ではなく技術的問題」であったとして、今月中にも再度閲覧可能にするらしい。GWにでも一読されたらどうだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿