2017年4月9日日曜日

本当の保守主義

   中島岳志さんのインタビュー記事が赤旗日曜版4月2日号に掲載された。
 橋下徹氏の大阪都構想を批判し橋下氏から強烈に嫌われた学者の一人である。
 大阪外大卒、京大大学院、ハーバード大客員研究員、北大准教授を経て東工大教授。テレビの報道ステーションのレギュラーコメンテーターでもあった。
 『リベラル保守宣言』という著書もあるそうだが私は読んでいない。
 著書のタイトルのとおり、氏は自身を保守主義者だと名乗っており、そういう立場から社会(政治)の現状を要旨次のように分析し主張されている。

 本来の保守思想は、リベラルで、「議論」を重視し、自分以外の「他者」の言い分や叡智を尊重して合意形成をはかるものだが、安倍政権やその周辺で「保守」を標榜している人たちは真逆である。
 自民党が本来の保守でなくなった転換点は中曽根内閣で、ラディカルな市場主義、小さな政府、官から民への規制緩和・・・、こういう新自由主義路線だ。
 本来の保守からいえば、資本主義には一定の歯止めが必要で、国家が一定の再配分を行い、秩序を安定させないといけないのに、市場の論理が全てに優先されている。
 安全保障でも、アジア諸国と良好な関係を保ちながら、軍拡ではなく「同盟」の方向に漸進的に進むべきだ。
 日米安保堅持・拡大はリアリズムでなく、そういう古い思い出にすがっていると、時代に追い越される。
 だから、政策的には共産党とだいたい同じで、例えば憲法9条で共産党は自衛隊の存在は暫定的には認め、将来の問題としては軍事的なもののない社会をつくるというビジョンを持っている。
 そういう絶対的な理念を掲げることは大切なことで、カント哲学でも言われている。
 私のような保守の立場の者が「政策から政党を選ぶ」インターネットのシミュレーションをやると、何回やっても共産党を選んでしまう(笑い)
(引用おわり)

 中島岳志氏のような感慨は私も奈良で度々味わってきたことで、県知事や奈良財界は、若草山にモノレールを造ろうとか、奈良公園の規制を解除して高級ホテルを建てようとか、平城宮跡を舗装してテーマパークのようにしようとかの計画を打ち出し、反対に、寺社に隣接する自然環境を守れ、土中の正倉院といわれる平城宮跡の木簡を守れ等々と主張して最も徹底して運動しているのが政党では共産党だという事実である。

 奈良における良心的な保守の意見は共産党が代弁している。
 だから、「本当の保守主義を貫くと共産党と共鳴する」というのは身をもって感じていたところだ。
 「保守本流は安倍政権を批判すべき」という氏の主張には納得できる根拠と理性が感じられる。

 中島岳志氏が、資本主義には一定の歯止めが必要で、国家が一定の再配分を行い、秩序を安定させないといけないのに、新自由主義の選択がそもそもの誤りの出発点であったと指摘していることの持つ意味は大きい。
 しかるに安倍政権は、国の基本方向を議論する財政制度審議会会長に日本経団連の榊原会長を就任させる。
 さらには、シリアでの検証も何もなしでトランプのトマホーク爆撃を支持した。
 対米従属、財界第一が露骨である。
 本当の保守の方々も勇気をもって発言していただきたい。

   仰ぐ空花に嵐の例えあり

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