2013年11月11日月曜日

秘密保護法に反対する

  少年Hの映画では、神戸の洋服屋であったHの父が、アメリカに帰国した顧客からいただいたニューヨークの絵葉書を持っていたために警察に引っ張られて拷問を受け、少年Hは机にスパイと書かれた。原作は妹尾河童氏の自伝だ。小説ではない。

  私は、早逝した私の父が戦時中松下飛行機㈱で働いていたので、少し父を偲んで松下飛行機㈱のことを知りたいと国立国会図書館関西館に行って相談したりしたが、答えは「終戦前の軍需産業の記録は全く残されていない」ということだった。
  甘っちょろい私は、「戦前」というものがそこまで酷いものという実感がなかったので頬を張られたというか、目を覚まされた感じがした。
  私はこのごろ、特定秘密保護法はあの時代を再現するだろうという恐ろしさを感じている。

  普通、法律が成立すれば、それを実際に施行するために政令や省令(施行規則)が作られ、運用通達や本省課長内翰・事務連絡などが作られるが、現場の公務員の実務態度としては、内翰、事務連絡や解釈例規に従って公務を遂行し、そのレベルで不明な点は省令へ法律へとさかのぼるのである。
  こういう態度はオカシナことではなく、実務というものはそういうものである。
 だから、「特定秘密保護法の運用に当たっての留意事項」というような内翰(表向きは私信であるが実際は現場を束縛する)で、「この法律の立法趣旨は〈政権の秘密は国民の知る権利に優先する〉との趣旨であることは明らかなところであるから、政権に不利益を生じる恐れのある情報は全て特定秘密に該当すると理解して遺漏なきよう期されたい。なお、この内翰自体が特定秘密に該当するものであることは言うまでもなく、この内容及び本内翰が存在することを漏えいした場合も同法により罰せられることとなるので念のため申し添える」というような内翰が出されれば、現場はこの趣旨を最優先にして動くことになる。
  国会でいくら「正当な取材は認める」とか「国民の知る権利は尊重する」とか言ったとしても、汚い言葉で申し訳ないが屁のツッパリにもならない。
  事実、戦前の軍機保護法でも国会では「危険な運用はいたしておらぬ」と言い続けてきたのである。

  自衛隊による市民生活のスパイ活動が訴えられた裁判で、今年5月仙台高裁は自衛隊情報保全隊長を証人喚問したが、証人は一般論と言いながら、反戦平和の歌を歌う行為やプロレタリア作家の展示会、春闘の街頭宣伝等が対象になり、機関誌や広報誌、インターネットから集めたと言った。  この裁判は内部告発に基づいて始まったもので、仙台地裁では市民が勝ったが、特定秘密保護法下であれば、原告側が引っ張られることになるだろう。
 重ねて言うが、この法律は公務員や報道記者を縛るものでなく、国民全員を縛るものなのだ。

  安倍首相等は、北朝鮮や中国の悪口を嬉々として語っているが、彼らの人権感覚は北朝鮮や多くの独裁国家の水準と変わらない。
 それは世界中がお見通しのことであり、先日「フォーブス」が世界で最も影響力のある人物を発表し第一位がオバマからプーチンになったとマスコミは報じたが、安倍首相が57位だということはあえて報じなかった。
 57位ということは、習近平の3位、金正恩の46位よりも低く途上国首相以下である。
 国際的には、この国はいま泥船だと理解されている。乗員だけが最新艦だと誤解している。

4 件のコメント:

  1. 映画「風たちぬ」で有名な「ゼロ戦」や戦艦「大和」も戦争が終わって国民がその存在を知ったという話や、戦時下の台風や大地震の存在は、戦意低下につながる、という理由で報道されませんでした。同じ轍を踏まない、という意味で鳥越さんら8人のキャスターの「特定秘密保護法」反対の記者会見に希望を感じました。

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  2.  近頃は「ねじれ解消」とやらで悪法の国会審議が異常な速さで処理されています。
     1か月後に話し合って、文書を作って、行動しようかということでは間尺に合いませんね。
     そういう時代に、「ネットは苦手や」と平然と言い続けるお年寄りにつける薬はないのでしょうか。

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  3. 自民党拒否の民主党政権の国民への公約裏切りからあっと言う間に日本は返り咲き自民党右翼翼賛国家になってしまいました。不思議ですネ。欲と我儘と浪費の生活の中で、権力と金と堕落文化に犯された自省と自覚の無い島国「民」はアジアの兄弟国である中国大陸、朝鮮半島を敵視するマイルドコントロールに乗せられて目の前の雇用不安、低賃金、年金減額、医療不安、原発災害、人権権利を忘れさせるマスコミの翼賛ニュースやCMの低俗メディアの心理科学で自ら権力迎合の中毒患者である事を自覚できない処が明日の悲劇・・今の現実があると思います。正直言って人生のゴールが近くで良かったです。チョット、ヘンコツジジノウツ状態デスカナ。

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  4.  昔はそういう状況を形容してルンペンプロレタリアートなどと言いましたね。それはともかく。
     やっぱり非正規不安定雇用が・・・つまり恒産のないことが・・・恒心をなくし、・・・アベノミクスへの期待になっているのでしょう。
     だとすれば、その失速は誰の目にも明らかになりつつありますし、早晩、破綻するに違いありません。
     それまでに繰り出される悪法、制度改悪を阻止しなければと思います。
     全国のヘンコツジジイよ発声せよ!
     

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