2013年7月6日土曜日

卑劣な人々と少年H

  6月28日付け朝日新聞によると、朝日新聞の投書欄「声」に掲載された、自民党安倍総裁の改憲姿勢に疑問を呈した投稿者等に対して、脅迫めいた組織的な嫌がらせがあるという。
 朝日新聞東京本社声編集長は、「投稿した人の個人情報をネット上でさらし、嫌がらせの電話などをするのは卑劣です。」「実名で安心して意見を言える場、そして社会を守っていくことが大切だと考えます。」と述べている。同感だ。
 7月1日付けの「声」には、「あなたの意見には反対だ。だが、あなたがそれを言う権利を私は命をかけて守る。」との18世紀フランスの思想家ボルテールの言葉を引いて、言論や表現の自由を守ろうとの投稿が掲載された。
 4日にも、「私も経験がある。」等々5人の勇気ある「声」が掲載された。5日にも。

 ところで、現憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」とあるが、自民党の改憲案12条は・・・、
 「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。」となっている。
 百姓読み(差別語だとの批判もある。申し訳ない。)なら「よく似た言葉の入替え」に見えるが、本質は、公益や公の秩序のためには国民の権利や自由が制限されて当たり前だと言うことである。
 この思想は、一言で言って全体主義、ファシズムの思想である。

 近頃は白昼堂々と「朝鮮人を殺せ」等と叫んで(ヘイトスピーチと言う)デモをする集団がある。レイシストと言うらしい。
 そんな面々が、国会で問題にされるまで長い間、安倍首相のフェースブック上で同様の主張を叫び交流し、それが拡散されるのが放置されていたらしい。
 私はこれは、安倍氏が政治的には共犯関係にあったとみるのが妥当だと思う。
 橋下維新の市職員思想調査といい、時代の逆ネジは憲法や法律の改正を待たずとも相当進んでいる。

 私は、戦前のあんな無茶苦茶な戦時体制がどのように確立されていったのかについて考えることが度々あるが、ファシズムは「明日から全体主義にします。」などと言ってやってこない。

 特高警察をベースにして、情報統制、学校教育、マスコミから町内会の場などなどで、じわりじわりとやってきて、「何が何でもそれはおかしいのでは?」と思った段階では誰も何にも言えない社会が作られていた。
 そのことは、難しい論文を読むまでもなく、妹尾河童著「少年H」を読めば解かる。 
 民主党に愛想が尽きたからといって、自民や維新が伸びたのでは取り返しのつかない結果が待っている。共産党の躍進なくして権利も自由も守れない。
 私は、「少年H」を読みながら自民党改憲案を読まれることをお勧めする。この本は文句なしに面白い。講談社文庫、新潮文庫、講談社青い鳥文庫等で文庫本化もされている。

 『Hは、実際に大正筋の薬局裏の小父さんが捕まったのを知っていた。
 うわさでは、近所の子供たちに、「天皇陛下というても、御飯も食べるしウンコもする。普通の人間と同じや」といったことが、警察に知られたからだそうだ。
 誰が密告するかわからないから、「天皇陛下」には気をつけようと肝に銘じた。』

5 件のコメント:

  1. 長谷やん
     素晴らしい記事を読ませていただきました。
     朝日新聞の投稿者への卑劣な嫌がらせを糸口にして、国民の自由と権利を保障した憲法12条に対する自民党改正案の危険な内容の告発、さらにはヘイトスピーチと安倍首相のフェイスブックとの関連記事を配し、最後に物言えぬ社会にしないために『少年H』を紹介するなど、多彩な内容を見事に構成した記事と言う他ありません。長谷やんがこの記事で訴えたかっただろう意図が、無理なく伝わってきました。

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  2.  和道おっさん、コメントありがとうございます。というか、こんなコメントを戴くと恥ずかしくてブログを書きづらくなりそうです。
     野暮な話をするつもりはないのですが、あの戦前の社会というのも、今とよく似て、何か気色の悪い雲行きを感じながらも、まさかそこまでは・・・と思いながら日々暮らしていたのだと思います。
     娘に「少年Hを持って帰る?」というと「重たすぎる」というので、「文庫本を買うように」言いました。

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  3.  選挙戦で「小さな政府」って叫んでいる人や政党がいますが、究極の「小さな政府」はファシズム国家でしょう。
     こんな話が、被害妄想でも針小棒大でもこじつけでもなく、結構リアルであるところが怖ろしいと感じています。
     ズバリ、じわじわと憲法96条から・・・ですね。
     だから私は、今度の選挙で非自民というだけではだめだと思います。日本共産党が延びることが、唯一確かな平和と民主主義と自由を守る力になると思います。

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  4. koshimo 2013.07.20
    昔の先輩から、暑中ハガキが来ました。彼は、黙々と信念を貫いています。敬意を評したい先輩です。
    私は、バブル期に階級社会の味をしめ有頂天になっていた時期もありました。
    今日の政治情勢・経済環境を見る限り、憲法第96条(第9条)の改悪・アベノミクスの超階級社会政策等、将来の不安を感じざるを得ないことばかりです。
    日本の野党は、現れては消え、消えてはまた現れる。民主党は、野党から与党へと政権交代をしましたが、ものの見事に国民を裏切りました。
    野党として一貫しているのは、確かに共産党だけだと思っています。

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  5. koshimoさん コメントありがとうございます。
     私は黙々とではなく、細々と言いたいことを言って暮らしてきました。
     それを、ちょっと大きな声で言いたいことを言おうと思ったのは「3.11フク1」です。
     爺ばかには怖いものはありません。
     また、よかったらコメントをお願いします。

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