2013年7月11日木曜日

恒産なくして恒心なし

  小泉「行政改革」のとき、推進会議の席上で松﨑労働基準局長が、竹中平蔵氏や八代尚宏氏に代表される市場原理主義者の「労働力は商品だ」という強烈な主張に対して、「労働力は商品ではない。労働力は人間だ。」と渡り合った(議事録を読んだ)ことをこの頃思い出す。
 なぜなら、安倍「成長戦略」の「労働規制緩和」は、この小泉「行革」の亡霊の復活であり「進化形」であるからだ。

 ■ 多くの問題点を含みながらも、「臨時的・一時的」と(タテマエ上は)されてきた労働者派遣法を改正し、限定されていた職種・業務の限定を撤廃し、派遣期間の制限も取り去る。
 ■ 労働条件が差別的に低く解雇もしやすい「限定正社員」の制度化。
 ■ サービス残業、長時間過重労働を公認する労働時間規制の適用除外や裁量労働制の拡大。
 ・・・・こんなことが参議院選挙後の安倍政権で実施されようとしている。
 一見地味な争点だが、本当は大問題だろう。

 勤労者の生活の充実なくして国の発展はない。
 職業生活の基礎を培う時期にスキルアップの研修もない非正規雇用を渡り歩き、幸せなことに常用雇用にありつけたら過労死と過労うつ病や自殺が待っている。
 本当にこれでいいのか。
 国民が投機やカジノに明け暮れて国が成り立つはずがない。

 『恒産なくして恒心なし』は孟子の言葉である。
 清貧に甘んじる心構えは貴重であるが、孟子は現実を喝破した。「一定の安定した職業が良識や道徳を支えるのだ。」と。
 世界中で起こっているテロや犯罪も、深部では若者の失業、不安定雇用に根ざしていることが多い。
 故に、労働政策は国が責任を持つ重要政策なのである。
 『恒産なくして恒心なし』は、以前にハローワークに勤めていた友人に教わった格言である。
 共産党の労働規制改革反対の政策は、現代に生きる孟子の教えである。と言ったら、あまりに古くさすぎますか。こういう言い方、私は好きなんです。

6 件のコメント:

  1. 今の社会は、以前にまして優しさのない社会になって来ていると思います。長谷やんの言われている「恒産なくして恒心なし」は日本の諺の「衣食住足りて礼節を知る」的なことと思いますが、衣食住の根幹である職業に就くのが難しいのに礼節は育たないと思います。選挙の時だけの「国民のため」はやめてほしい。改憲、TPP、原発再稼働など国民に優しくない政治が進められようとしています。人に優しい世の中を創っていこうではありませんか。田舎の私の周りでも、自殺とかうつ病で休職中とか暗く辛いことが多くなってきています。

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  2.  余裕のない企業社会がメンタルの不調を生み出しているのは間違いありません。
     今発症していない人も紙一重と言ったところでしょう。
     自民党の候補者のワタミの会長は、「労働時間などない。成果を達成したときが終業時間だ。」と公言しています。
     民主党にあきれ果てたから自民党・・では大変なことが起こるでしょう。
     土佐は、かつて山原健二郎という有名な共産党の代議士を輩出した地。今度の参議院選挙でも日本共産党の躍進を期待したいものです。

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  3.  日本の文化の素晴らしいところは、侘び、寂び、洒落にあると思います。何でも競争、競争に敗れることは許されない社会は、ロボットの社会と同じであると思います。性能のいい、無駄のないロボットが一番偉いでは面白くないと思います。侘び、寂び、洒落で明るい明日を創りましょう。

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  4. 「労働力は商品ではない」というのはわかるのですが、一方で、マルクスが『資本論』でも詳述したように、労働力は資本主義社会では商品であるというのも事実と思います。商品ではあるが、特殊な商品であるということだと思います。

    ぼくは市場原理主義者と呼ばれる、記事に名前の出ている人たちが、市場の現実を直視しておらず、そもそも生活保護最低基準を下回るような賃金水準を生み出すような労働市場自体に問題があるのだという認識を持たないことが、学問的誠実さという点で信じがたいです。

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  5.  バラやん、含蓄深いコメントありがとうございます。
     同感です。
     「人間らしい労働」は大切な政策課題ですね。

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  6.  mykazekさん、規制緩和派との論争の焦点は、経済学の定義についての学術的論議ではなく、労働力政策を、人間(家族も含め)の生活や人生と切り離して将棋のこまのように扱ってよいのか・・・ということにありました。
     雇用の流動化とか、労働規制緩和とか解雇の金銭解決など、自民党や維新やみんなの参議院選挙政策には、やはり人間が不在です。

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