「人新世」(ひと・しんせい)とは、ノーベル化学賞受賞者パイル・クルッツェンが「地質学的に見て地球は新たな年代に突入したと言い、それを名付けたもので、人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味である。
370頁超の論文の書評をブログ記事如きにまとめる能力はないが、カール・マルクスが資本論第1巻を刊行後、思索・探求していた諸々の史料を丁寧に読み解き、マルクスは、マルクス死後盟友エンゲルスが編集した第2巻、第3巻をさらに大きく「理論的大転換」を遂げていたと事実をあげて説明しているのは刺激的である。
次から次へと”目から鱗”の提起があり、私は現在目に障害が生じていて読書が辛いという条件下にあったが、「早く全文を読み終えたい」という欲求がその条件を上回ったのであった。
些細な言葉一つにしても、例えば我々はほとんど無条件に近い形で「自由」という言葉を肯定的に使用しているが、資本主義の下での「自由」は「不公平」と背中合わせ、否、事実上同質かもと大いに考えさせられた。「社会の脱炭素化」「民主主義の刷新」「資本主義の超克」も「常識」と見なされているものの根本的問い直しが必要だという。
早い話が、世界は、資本主義の終焉以前に地球が壊れる時代である。そしてその克服の入口には、ハーヴァード大学の政治学者エリカ・チェノウェスらの指摘する「3.5%」があるという。3.5%の人々が非暴力的な方法で本気で立ち上がると、社会が大きく変わる事実が広がっていると。ウォール街の座り込みその他その他その他・・・・。
冷笑主義を捨て、3.5%が動き出せば、資本の力は制限され、民主主義は刷新され、脱炭素社会も実現されるに違いない。
9月2日のブログ記事のコメントで、読者の皆さんには”必読の書”だと書いたが、もし未だ購入されていない方は購入をお勧めする。そして、大いに語り合いたいものだ。
コロナ肺炎感染拡大の下、集合しての行動が制限されるが、本は読める。意見を発信できる。SNSでも、他の電子媒体でも、手紙でも、電話でも、某住職のような「掲示」でも、方法は考えるならいくつもある。結果論としてコロナを言い訳にして何もしないのが一番良くない。政権を問う歴史的な総選挙を目前にして人生に悔いを残さない生き方をしたい。この本は読み終えるのに少し疲れるが、それ以上の力をくれる。
0 件のコメント:
コメントを投稿