2014年1月12日日曜日

四日市の事故に思う

 
  三菱マテリアル四日市工場で5名死亡、12名重軽傷という悲惨な労働災害が報じられた。
 労働災害防止に少しでも関心のある人々にとっては、時計が数十年遡ったような感覚があるだろう。
 報道の限りでは、振り返ってみれば・・十分な安全確認がないまま蓋を開けたというが、災害というものは・・振り返ってみればそんなことが多い。
 だから、「今後は作業手順を徹底します。」では済まないと思う。人はミスをするものなのだから。
 ミスをしても起こらない本質的な安全化が図らなければならないのだ。
 さらに報じられているところでは、同工場ではこれまで事故がたびたび起こっていたという。
 きっと、もっと小規模なヒヤリとしたりハットしたりした事案は多かったのではないだろうかと想像する。
 そういうヒヤリハット体験をしっかり汲み上げておればと反省している人も多いだろう。
 『重大事故の陰には29倍の軽度事故があり、300倍のニアミスが存在するものだ。』というのがハインリッヒの法則といわれるものである。
 世の中でリストラという言葉や減量経営、果ては非正規雇用という言葉がもてはやされる中で、少なくない企業で一見不採算部門に見えるような安全衛生部門の人減らしが顕著に進んだというのは誰もが実感している。
 そういう中で、分厚いマニュアル本と引き換えに災害防止の多くのノウハウが世代間で断絶していっている。
 同じことは、国や自治体の災害防止部門でも起こっている。
 繰り返して言うが、「手順を徹底します。」「チェックを徹底します。」では済まないのである。

2 件のコメント:

  1. 先日、あるシンポジウムで日窒コンツェルン(チッソの前身である日本窒素肥料を主とした財閥)が朝鮮半島の興南に進出して建設した工場に関する報告を聞きました。現地では水俣から移住した内地労働者(管理職や技術職)と朝鮮、中国人労働者との差別が激しく、労災も次々と起きていたようです。ところが、1970年代から80年代にかけて、そうした管理職の方々が過去を回想し、興南では、パイロットプラントを作らずにいきなり本プラントを作る作業工程が日窒流だったと自慢げに述べ、フロンティア精神があったと評価しているようなのです。二度と戻りえない過去に投影するノスタルジーがそこで生まれているのですが、おそらくは、1970年代の日本でもそうした感性は通用しなかったはずで、現実と切り離された人間は歴史に学ぶこともなく歪めることだと、いろいろ考えさせられました。

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  2. mykazekさん、示唆に富む話をありがとうございます。
     日本というのは欧米に比べてキリスト教の影響が少ない分、資本主義が素のままで人の心を歪めたように思います。
     『資本主義が犯した最大の罪は、人間性を破壊したことです。』アルバート・アインシュタイン

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