ごく近所の楠の地衣類 |
もちろん、清酒「世界一統」の酒造家の息子であった大天才・南方熊楠(くまぐす)しかりである。
その気になれば数々波に乗ることのできた恵まれた環境をことごとく自分で飛び出し、キューバをはじめ世界中を渡り歩き、大英博物館の嘱託となるも殴打事件で追放、帰国後は神社合祀令に反対し「鎮守の森を守れ」と同令推進の会議場に殴りこみ拘留、その拘留中に新種の粘菌を発見、数々の粘菌類の世界的発見等の後、昭和天皇にキャラメルの箱に入れた標本を献上して御進講。
すべて小説もどきの本で読んだ事々だが、その痛快な人生に興奮したことを思い出す。
その熊楠が発見し、分類し、研究したのが「動物でも植物でもない?」粘菌や地衣類で、現在でも新薬のヒントが詰まっている打ち出の小槌のように思われ、世界中(特にアマゾン)で研究されているのをテレビで見たことがある。
粘菌は変形菌と言われ、地球上で唯一の『運動する多細胞陸上植物』らしい。動物と植物の分類の基準については幾つもの学説があるようだが、何かそういう必死に分類しようと悩んでいる人類をあざ笑っているかのような生物である。
おまけを言えば、粘菌が餌に向かって迷路の中の最短経路をつなぐ能力に着目した北大や東工大の先生による「粘菌コンピュータ」なるものの研究がイグノーベル賞を受賞し、新聞紙上でも大きく報じられたことがある。
かように、なんとなく・・偉~い・・けれど、トボケタ生物である。
ということで、カメラを提げて熊楠を真似て地衣類の撮影に出掛けた。
たいそうな話ではなく、家から数百メートルのいつもの道を5分間ほど歩いただけ。
10数年間毎日のように通勤していた道で、平均的な通行人よりは木々や季節を眺めながら歩いてきたつもりだが、この地衣類だけは「所詮苔(こけ)か黴(かび)」程度に考え、まったく注目したこともなかった分野である。
そして、この写真を撮ったからと言って、いまさら地衣類の研究をして見たいとも思わないが、できれば少しずつ自分の記憶のコレクションに追加していきたいと思っている。
ちょっとキクラゲに似て美味しそうな気もするが。
大英博物館、全図書読破などのエピソードを畏敬の念をもって読んだ事があります。水木しげるの漫画にもなって、奇行ぶりが面白く描かれていました。まさに、日本の知の巨人、凄まじい人、でした。ただし、地衣類の探索は結構ですが、パンツ一丁で近所をうろつかないようにご注意を。
返信削除!熊楠は素っ裸で研究をしたり山に植物や鉱物の採集に出掛けたりしていますね。
返信削除私はそこまで奇人ではありませんが、自重、自重。
!このブログを書くに当たって神坂次郎が‘87大衆文学研究賞を受賞した「縛られた巨人・・南方熊楠の生涯・・」を読み返そうと思ったが、どうした訳か書架に見当たらない。凡人こそ努力が必要なのにこのありさま。故に凡人なのでしょう。
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