2020年11月29日日曜日

ワンフレーズの落とし穴

   政治の世界でワンフレーズの扇動が目立ちすぎる。マスコミがそれを「わかりやすい政治」だとか「劇場型」などともてはやすから一層始末が悪い。

 行政の機構等に関わっていうと、「行政改革」だとか「小さな政府」だとか「身を切る改革」などというキャッチフレーズを連発して改革者を装いながら、政党交付金は懐に入れ、政治資金の報告では嘘を重ね、国の行事を後援会の選挙運動に使い、自治体に関係する広報等で特定政党の主張を宣伝する。

 最近では「学術会議に10億円」というキャンペーンが仕掛けられたが、菅首相は官房長官時代に領収書不要のつかみ金官房機密費を毎年約11億円費消していた。その菅内閣の次のキャッチフレーズは「縦割り行政の廃止」という。

 とまれ、ワンフレーズは危険である。「縦割り行政」には非効率や不便があるのは事実であるが、最も効率的な行政組織は独裁政治だということをまず押さえておきたい。

 そして、「縦割り行政」の弊害も認めないわけではないが、あえてここでは「縦割りで何が悪い」と考えてみよう。経済産業省があって、それにある意味ブレーキを掛ける消費者庁がある。環境省もある。事業を拡大したい多くの省庁があり一定のブレーキ役の財務省がある。

 省庁というのは各省庁の設置法があり、所轄する基本法を持っている。その事務方トップが各省庁次官でさらなるトップが各大臣である。閣議はその大臣間の合議の場というのが行政機構の本質である。本来の姿である。それを、内閣府と首相秘書官あたりが取り仕切るのは不正常なのである。

 例えば厚労省には労働基準監督行政などの労働行政がある。もし「縦割り行政」、つまり各法律執行などの分野ごとの独立性が抑制されたならば、「コロナ禍では解雇を自由にしよう」とか「残業は死ぬまで可能にしよう」となりかねない。はっきり言えば、「縦割り行政」だからこそ、あんなひどい安倍政権であっても一方では「過労死防止」などの監督が行なえているのである。

 縦割り行政間の横断的連携や協議は住民サービスの観点から大いに進めればいい。しかしながら自公や維新のいう「縦割り行政廃止」のワンフレーズに騙されてはいけない。アクセルだけの自動車に乗って走るような話になる。このキャッチコピーは実は非常に危険な側面を持っている。

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