2020年11月25日水曜日

しろばんば

   人間世界にも「わかっちゃいるけど」という色恋の世界があるように、晩秋から初冬の綿虫(わたむし)は害虫などという概念を超えて季節の風景に感じられる。そのあたりが色恋の世界に似て没論理的に可愛い。

 右の拡大写真のように撮ってしまうと如何にも「ムシ」だが、飛んでいるさまは綿毛であり小雪である。だいたいこんなには見えない。

 北の地方では「雪虫」といって初雪の前触れと言われているし、井上靖の自伝的小説の題名「しろばんば」もこの綿虫だといわれている。ネーミングとしては『しろばんば』がいい。

 基本はアブラムシ科の害虫で、何代か単為生殖を繰り返したのち晩秋から初冬に「綿虫」になるらしい。それだけ下等というか低位の昆虫なのだろう。

 いらぬ説明をしすぎたが綿虫は文句なく初冬の風情である。ふわふわ漂っている綿虫は、「こ奴、害虫め」という気にならない。

 小春日和の庭で逆光に照らされてふわふわ漂う綿虫をぼんやり眺めていると、さだまさしの作った歌『秋桜』が浮かんでくる。

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