2020年11月18日水曜日

甲子(きのえね)

   古くは日本のカレンダーは十干十二支(じっかんじゅうにし:俗にいうエト)で表されていた。大正13年は甲子(きのえね)の年であったから、この年に誕生した大球場は甲子園と名付けられた。十干十二支は年だけでなく日についても60日サイクルで巡ってくる。昨日の11月17日はその甲子(きのえね)の日であった。

 甲子(きのえね)は十干十二支のトップバッターであり、かつ子(ねずみ)は大黒様の眷属ということで、甲子(きのえね)の日は甲子祭という大黒様の縁日、お祭りの日である。

 どういうわけか私の小さい頃わが家ではそのお祭りをしていて、甲子(きのえね)の日には大黒様の掛け軸をかけて赤飯を山盛りにしてあげるならわしだった。山盛りの赤飯には蓋をチョコッと乗せ、湯気で蓋が滑り落ちると「大黒様が召しあがった」というようなことを言っていた。

 父母が鬼籍に入った今となっては、どういういきさつで甲子祭めいた行事をわが家でしていたのかはもう判らない。

   ただ、それ以上でも以下でもない、宗教行事というよりも素朴な民俗行事のような思い出が今となっては懐かしい。そんなもので、久しぶりに大黒様の掛け軸を掛けて、赤飯代わりの20穀米を供えてみた。

 大阪弁に「きっしょ」という言葉がある。「機会」という感じだが「再スタート」というニュアンスもある。十干十二支のトップバッターの甲子(きのえね)の日は、とりあえず60日周期の「きっしょ」に違いない。大黒様を見ながらそういう風に心をリセットした。

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