2018年3月3日土曜日

働き方改革は抱き合わせ商法

   安倍政権の国民だましの手法に「一括法案」という卑怯な手がある。
 働き方改革法案も、時間外労働の上限規制、裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度、同一労働同一賃金等を玉石混交に一括して、いわば不良品の抱き合わせ商法のようにしている。

 労働基準法、じん肺法、雇用対策法、安全衛生法、労働者派遣法、労働時間等設定改善法、パート法、労働契約法という8つの法律を一括して、耳障りの良いキャッチコピーで不純な内容が国民に理解されないうちに成立させようというものである。
 本来、立法目的や制度趣旨の異なる法案は、国会へ別々に提案して丁寧に審議すべきであるが、近頃の安倍自公政権のそれは実質的には独裁者の常套の手法である。

 市民と野党の運動によって3月1日、安倍首相は裁量労働制の部分は今国会提出法案から削除すると表明したが、高度プロフェッショナル制度(高プロ)や残業の上限制限は削除せず成立を目指すとした。

 その高プロだが、これまでも度々提出されたが、「残業代ゼロ法」「過労死促進法」だと厳しく批判されてこの2年間国会で審議入りさえできなかったものの看板を変えただけのものである。
 なお、NHKやマスコミが度々「働いた時間でなく成果で賃金を決める制度」「成果型賃金」と誤報や意図的な誘導を行っているが、賃金制度に関する要素は全く含まれていない。虚偽の誘導報道は犯罪だと私は思う。

 内容は、およそ年間給与額が現水準で1075万円以上の労働者を全ての労働時間規制から除外するだけのものである。
 これって、究極の労働法の蹂躙ではないだろうか。
 年収1075万なんて関係のない話だと思うかもしれないが、経団連は400万円と提言しているし、安倍首相も「経済状況の変化によっては変化する」ことを発言している。
 規制緩和とか特区というのは脱法行為のようなものであるが、その種の法律制定時の政府の合い言葉は「小さく生んで大きく育てる」である。
 明日は我が身と考えるのが正しい。それが理解できないなら朝三暮四のお猿さんを笑うことはできない。

 次に労働時間の上限規制であるが、政府は「時間外限度基準告示」を法律に格上げするという面だけを宣伝しているが、その内容は、1か月について休日労働を含む時間外労働の限度を100時間、2~6か月の1か月平均で80時間としている。
 これは、いわゆる過労死の労災認定基準の「文句なしの最終認定レベル」で、過労死防止法違反の法案といえる。

 過労死の労災認定基準の「過重負荷の判断」では、労働時間の外、①不規則な勤務、②拘束時間の長い勤務、③出張の多い業務、④交替制勤務・深夜勤務、⑤作業環境(温度環境・騒音・時差)、⑥精神的緊張を伴う業務について十分検討することとなっている。
 その土台となる労働時間については、「1か月におおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症の関連性は強まる」となっている。
 「文句なしの認定レベル」といった意味がお判りだろう。
 時間外労働が50時間程度であっても①から⑥の負荷要因が著しい場合は労災認定されるのである。
 だとすると本来の上限規制なら45時間を出発点にすべきである。
 なお、ここでいう時間外労働とは1週40時間を超える時間をいうので念の為。また、認定基準には他の要素もいろいろあるがここでは省略する。

 少し違う角度からも、現在の司法判断の水準では、月に95時間や83時間の時間外労働も、使用者の安全配慮義務違反、公序良俗に反するとしているが、法案は明らかに時代を後退させるものとなるだろう。
 さらに、研究開発、建設業、自動車運転、医師等は猶予期間や例外を認めるというのだから、労働基準監督の後退も懸念される。

 よって、裁量労働制撤回で一安心するのでなく、以上の条項も断念させる必要がある。
 十分ご存知の事柄だが私の意見を念の為書いてみた。
 過労死は本人にとっても家族にとっても悲劇である。
 誰もが「まさか自分が」と思いながら追い詰められた結果である。
 労働者と家族の命がかかった法案である。
 力を合せて撤回させたい。子や孫が悲しまないように。

    春一番虚勢の綻ぶ音がする

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