私の尊敬する友人であり後輩であるAさんはロシア文学評論家として有名である。
そんな彼にこの記事を読まれると恥ずかしいが・・・、
少し前から近くのスーパーにビーツ(テーブルビート)のパック詰めが出ていた。
そのビーツが私に「買ってちょうだい」と訴えかけるので一二の三で買い物かごに入れた。
もちろん、目的はボルシチだが、レシピはほとんど頭に入っていない。
まあ、京都祇園のキエフで食べたイメージから逆算したらなんとなくレシピらしきものは浮かんできた。
妻はあきれて「私はレシピを知らんから作ってや!」と横を向いた。
小さいときに父親が亡くなり母親が働きに出ていた我が家では、中学生のときから基本的には晩御飯は私の担当だった。
そんなときボルシチに挑戦したことがある。
ただし、当時はビーツを知らなかったから、ケチャップでそれらしい色にした。
そういうスープ(シチュー?)はその後も何回か作ったことがあったが、今回は本格的に再挑戦である。
結局、ここに記事を書くほど難しいものではなく、言っちゃあ悪いがロシアの田舎料理だと思って取り組んだ。
サワークリームなどというオシャレなものもなかったが、妻と娘からは「美味しい」と合格点をもらった。
隣の食パンはオリジナルの「揚げないピロシキ」だ。
こちらの方は父親が高島屋地下の食品街で働いていたことがあったので、初期のテレビCMで超有名なパルナスのピロシキで味は覚えている。
クミンで香りを付けたら、気分は一気にステンカラージンの世界に飛んでいった。
手前味噌ながら、妻にも、やってきていた娘にも美味しいとの評価をもらった。
ボルシチは味も味だが、ボルシチといえばあの赤い色である。
その元がビーツであり、感心するほど綺麗な色がドドッと出てきた。
見た目で食べる料理だとも思う。
ただ、ほんの少しづつだが隠し味を足しているうちに少し濁ったのは残念だった。
テレビから、「千島列島の領有権を放棄して2島返還の感触だけで経済援助をする」という政府のニュースが流れる中だが、それとは関係なしに私のボルシチは美味しかった。
ボルシチの本家はロシアだウクライナだと言い争いがあるようだが、この類の話は世界中に多い。
多数意見はウクライナが本家だという。ウクライナというと私はチェルノブイリを思ってしまう。
スベトラーナ・アレクシェービッチの名著『チェルノブイリの祈り』に登場した人々もボルシチを日常的に食べていたことだろうと思考する。
それがあの事故で、即死よりも残酷な死の渕に突き落とされたのだ。
という記憶がついてくるので、ウクライナ料理というルーツを知ってしまってからは、一層ボルシチの味は深まった。
ボルシチはウクライナ未来の物語
(※「未来の物語」は「チェルノブイリの祈り」の副題)
ボルシチ食べたくなってきました。私のレシピは、ビーツは丸ごと鍋に入れて50分程度ゆで、箸が中まで刺さるように確かめます。ゆでたビーツの皮をむき、適当に切ります。キャベツ、ニンジン、玉ねぎなどお好みの具材をフライパンで炒め、そこに切ったビーツを加えます。こしらえておいたスープにフライパンの具材を移し、塩、コショウ、パセリ、ローリエで味をととのえます。
返信削除味付けは相当質素なので、濃厚にするにはスープの作り方がポイントです。テールでだしを取った時が一番現地に近い味と思いましたが、鶏がらでとってもよいと思いますし、さっぱりしたものであればすじ肉などでもよいと思います。ビーツはお通じをよくするので、胃腸も快適です。
ゆでたビーツをみじん切りにして、マヨネーズで和え、サラダにしてもおいしいですよ!
mykazekさん、早速読んでいただいた上にコメントを戴きありがとうございます。
返信削除私は牛の筋肉で作りました。
サラダにもできるとのこと、きれいでしょうね。一度試してみます。
それにしても物凄く鮮やかな色です。食卓が輝きました。
些末な思い出ですが、若い頃、東京・神田のロシア料理店『バラライカ』で食べたのが初ボルシチでした。確か??
返信削除ピロシキにクミンを使った話だが、クミンはエジプト原産の香辛料で、クミンを使うとその料理はいっぺんに中央アジアの匂いがする。
返信削除中央アジアというのは全く根拠がなく私の独断であり夢想である。私は交響詩「中央アジアの草原にて」を聞くとクミンの香りがするのだ。
友人たちと羊の焼肉を食べに行ったとき「クミンはどうも」とも言われたから、少し好き嫌いの出る個性的な香辛料である。
ただ、我が家では「クミンを入れたらいっぺんにピロシキはスラブの香りになった」と評価は高かった。このスラブも全く根拠はない。スラブ人が聞いたら怒るかもしれない。
ただし、それほどクミンは想像を広げてくれる香辛料だと思う。